就活にかかるコスト 学生サイドだけで1,935億円

経団連の中西宏明会長が「就活ルール」の廃止に言及して以来、就活に関する色々な論評が発表されている。それらの論評は、就活の存在を前提として、就活そのものが必要かどうかは考察されていない。

就活にかかるコストは、学生側だけでも膨大な金額になる。採用側でも大変な額になる。採用側では、コストに見合う利益が得られないとして、採用ルールを見直す動きがある。
経団連の中西宏明会長は3日に開いた記者会見で、就職活動の時期などを定めた「就活ルール」の廃止に言及した(9/3/18日経)」のは、採用側の就活の利益がコストを下回るようになったからであろう。
求職者にとっては、就活のコストは社会人になるための入場料のようなもので、逃れるすべはない。だが、本来必要のないものであれば少しでも減らすのが合理的である。
ここでは、学生側と採用側のコストを推定してみよう。


大卒、大学院卒が約43万人。活動期間3ヶ月、そのうち就活に1/2振り当てるとする。Ⅰ日当たりコストを10,000円と仮定する。
430,000×10,000×90×1/2 = 1,935億

採用側では、求人数81万人。求職者数の1.8倍。求職者と同じファクターを用いると、
1,935×1.8 = 3,483億

これが大きいか少ないかは、一概には言えないが、経団連会長が止めようと言っているのであるから、採用側には重荷になっているのは間違いない。しかし、止めてしまうというのは無責任である。学生にも企業にも無秩序の混乱をもたらす。代替案を示すのが、これまで就活を主導してきた者の責任である。
この際、就活に変わる新たな求職・採用システム作り上げれば、学生も採用会社もハッピーである。学生は本来の学問に振り向ける時間が増え、結果として採用側にも恩恵が及ぶ。


この求職側と採用側のマッチングについて学問的な成果があって、2012年のノーベル経済学賞は、アルビン・ロス米ハーバード大学教授とロイド・シャプレー米カリフォルニア大学ロサンゼルス校名誉教授が受賞した。ロス教授は米国の医療界で、研修医が勤務を希望する病院と病院側の受け入れ希望をマッチングさせる「研修医マッチング制度」が使っていたアルゴリズムが、ゲール教授とシャプレー教授のアルゴリズムと本質的に同じ物であることを発見した。

新しい時代の採用システムとして、ノーベル経済学賞受賞の理論を用いた、就活サイトを開くのである。例えば、登録は大学入学から4年生へ進学した期間の任意の時点とし、企業は、採用アルゴリズムを動かして絞り込む。100人採用のうち、1000人の応募者があれば、300人ほどの候補者に絞り込む。その後は、人間が面接して最終決定する。複数のアルゴリズムを働かせて優劣を比較する。何年かの内に淘汰が進むであろう。

このような視点で、「10/23日経経済教室、就活ルールを考える下、「人間の選択 絶対視避けよ」エール大学助教授・成田悠輔」は興味深い。

世の中は、IoTとか言われているが、IoHという人間が技術を利用して楽が出来る社会になる可能性がある。

(参考 マッチング理論)
日経ビジネス 2012年10月18日(木)
ノーベル経済学賞、アルビン・ロス教授が起こした経済学の「革命」
https://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20121016/238121/

2012年のノーベル経済学賞は、アルビン・ロス米ハーバード大学教授とロイド・シャプレー米カリフォルニア大学ロサンゼルス校名誉教授に決まった。様々な国家の「制度疲労」が目立つ世界情勢の中、既存の市場や制度を分析する従来型の経済学と一線を画し、制度をどのように設計するかを究める「マーケットデザイン」の研究が脚光を浴びることになった。ロス教授のまな弟子、小島武仁・米スタンフォード大学助教授が本誌に緊急寄稿した。
ゲール教授とシャプレー教授の理論は抽象的な数学理論だったのだが、この理論の経済学的な価値に気づき発展させてきた中心人物が、ロス教授なのである。1984年に発表した論文で、ロス教授は米国の医療界で、研修医が勤務を希望する病院と病院側の受け入れ希望をマッチングさせる「研修医マッチング制度」が使っていたアルゴリズムが、ゲール教授とシャプレー教授のアルゴリズムと本質的に同じ物であることを発見した。

(参考 日経経済教室、就活ルールを考える下)
10/23日経経済教室、就活ルールを考える下、「人間の選択 絶対視避けよ」エール大学助教授・成田悠輔
データ・機械で自動化一案
・就活ルール廃止の是非は問題設定が狭い
・自動化なら学生・企業の労力や時間節約
・機械より人間が優れているとの理由はない

(参考データ)
リクルートワークス研究所 調査結果 大卒求人倍率調査
http://www.works-i.com/surveys/graduate.html
大卒求人倍率調査 最新の調査結果(2019年卒)より
来春2019年3月卒業予定の大学生・大学院生対象の大卒求人倍率は1.88倍と、前年の1.78倍より0.10ポイント上昇した。
全国の民間企業の求人総数は、前年の75.5万人から81.4万人へと5.8万人増加している(対前年増減率は+7.7%)。 学生の民間企業就職希望者数は、前年42.3万人とほぼ同水準の43.2万人であり(対前年増減率は+2.1%)、求人に対して、38.1万人の人材不足となっている。