企業統治に関する意見、アメリカ型の株主重視モデルをまねるな

2000年代になってからの日本企業の経常利益(上昇)、投資(横ばい)、労働分配率(下落)の推移を見ると、日本企業は株主重視にかじを切り、「資本主義的搾取」の典型例となっている。

8/10日経経済教室「資本主義の未来⑤」CA大学バークレー校教授、ステーブン・ヴォーゲル「日本型制度の強み生かせ」「労働者の柔軟性向上急務」。ヴォーゲル教授は、日本経済の専門家で、米経済と日経済を公平に見比べることの出来るポジションにある。
ポイント;
・規制の削減より適切な市場の設計が重要
・協調的労使関係や利害関係者重視が強み
・日本は米国型の株主重視モデルまねるな

ヴォーゲル教授は、規制緩和などの構造改革が期待通りの効果をもたらしていないと述べる。そして、市場は本質的にガバナンスを必要とすると指摘する。市場の強化・改ざんとは規制の削減や自由化という「規制緩和」でなく市場のガバナンスを改善することであると主張する。その例として、労働市場企業統治を取り上げる。
労働市場の改革では、従来は企業の自由裁量を増す雇用者寄りであった。この結果、需要の低迷とマクロ経済の弱体化という副作用を招いた。今回は労働者寄りになり、労働参加率と生産性の向上を目指すプラス・サム改革へかじを切った。

企業統治改革には、二つの方向性がある。一つは、経営プロセスの改善で長期的成長を目指す。もう一つは、労働者を犠牲にして資本利益率を高め目先の超過利潤追求に走る(アメリカ型)である。教授は、アメリカ型の特徴であるストック・オプション、自社株買い、敵対的買収社外取締役などは必ずしも米企業の業績改善につながっていないと喝破する。日本は、アメリカ型の企業統治を真似るのではなく、日本の強みを生かす方向で企業統治を構想すべきであると勧める(ステーク・ホルダー重視など)。

大塚家具は株主利益に偏重した企業統治の典型例である。

2018年8月9日 11時0分 東洋経済オンライン
大塚家具の経営問題
株主の利益を重視しすぎて従業員が犠牲か 経営難の大塚家具
http://news.livedoor.com/article/detail/15134309/

1. 従業員を犠牲にしてまで株主還元が必要だったのか
2. 間接部門のスリム化が遅れている
3. 従業員持株会の急激な縮小

1. 従業員の犠牲
2015年12月期に484万6000円だった従業員の平均年収は、2017年12月期には428万8000円まで下がりました。わずか3年で55万8000円。1割超のダウンです。
(筆者)他方で、配当は維持されている。従業員の賃金をカットすることで、配当原資を捻出しているように見える。
2015年 EPS 及び一株当り配当   19.38円 80円
2016年 EPS 及び一株当り配当 赤字257.1円 80円
2017年 EPS 及び一株当り配当 赤字410.62円 40円

2. 間接部門のスリム化
本社部門が肥大をしている可能性があるということです。本社所属の従業員数は2015年12月期に254人でしたが、2017年12月期は265人に増えています。
(筆者)経営建て直しには、間接部門の削減が第一と思われる。

3. 従業員持株会
従業員持株会は2013年12月期に52万2000株を保有していましたが、2017年12月期には同28万6000株と半分近く減っています。
(筆者)船が沈みそうになるとネズミが逃げ出すといわれている。そのような事態でなければよいが。