大塚家具:取締役の義務と株主権

注目を集めた大塚家具(会社)の株主総会が終了し、社長が信任された。
これに伴い、大塚前会長(前会長)は取締役を退任し、代表取締役を辞任した(下記お知らせを参照)。

会社が前会長の株主提案を受け取ったことを発表したのは2月17日。
会社は2月13日に「新経営体制に関するお知らせ」を発表し、前会長を取締役候補としないことを表明している。

2月13日から17日の間に、前会長は取締役としての任務を放棄し、株主の権利を主張するようになった。前会長は、代表取締役であるにもかかわらず、会社の意思決定に対抗しているのである。前会長は、取締役の忠実義務、善菅注意義務に違反しているように見える。
また社長のほうは、会社の意思決定に反した前会長に辞任を迫ることなく、代表権を残したまま、役員報酬を3月27日まで払い続けた。両者とも、権利義務の意識が希薄のように見える。

本件には続編がありそうに思える。前会長が本気で会社を自分の会社にしたいなら、スポンサーを探して遅くとも年内までに行動を起こすだろう。もし動きがなければ、前会長は本気でなかった、あるいは、何らかの手打ちが行われたと判断されるであろう。しばらくは、動きを注視したい。

4/2日経経済教室「企業統治改革の論点」上村達男早稲田大学教授は、金融庁東京証券取引所が主導した企業統治指針に批判的だ。曰く「指針、根幹の議論なく」「政権の成長戦略と距離を」と。

確かに企業統治指針(指針)は、大塚家具問題をどのように解決できるのか。
指針の定義は、「会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」であるとする。その目的は、「会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上」にあるとする。

この指針で言えるのは、大塚家具は社長を中心に結束して業績向上に努めよということである。これでは、殆ど役に立たない。創業者、大株主が代表取締役というのは、日本の上場企業によく見られる。ソフトバンクユニクロ楽天などそうそうたる企業が並ぶ。これらの企業を視界に入れない指針の存在意義とは何か。

代表取締役の異動に関するお知らせ
当社は、平成27年3月27日開催の第44回定時株主総会において取締役の選任が決議され、これに
伴い代表取締役の異動が生じましたので、お知らせいたします。

1. 異動の理由
代表取締役会長大塚勝久が、定時株主総会終結の時をもって取締役を任期満了により退任した
ことに伴うものです。
2. 代表取締役の異動(退任)
氏名 旧役職名 退任日
大塚 勝久 (おおつか かつひさ) 代表取締役会長 平成 27 年3月 27 日