配偶者控除の廃止が見送られる

配偶者控除が時代に相応しくないとか、税額控除が低所得者層に有利とか、女性の社会進出を促進するとか周辺的な議論ばかりで、配偶者控除そのものの議論が殆どなかった。

10/13日経経済教室「配偶者控除見直し 残る論点(下)」三木義一・青山学院大学学長は、租税法の専門家である。
「所得用件廃し、一律適用を」「最低限度の生活保障 担う」
・代替措置なく制度廃止すれば違憲の疑い
・「内助の功」を認めた制度というのは誤解
・一人五万円の税額控除適用するのが妥当

1. 扶養控除創設の歴史
2. 控除の問題
3. 適用要件の問題

1. 扶養控除創設の歴史
① 1887年(明治20年所得税法が導入される。
② 1920(大正9年)扶養控除が導入される。妻は扶養者として認められなかった。家制度の下で妻は扶養者として認められていなかった。
③ 1940(昭和15年)妻が扶養控除の対象となる。戦争直前で人口政策(産めよ増やせよ)によるものであった。
④ 1950、家制度から個人に課税する方式に代わった。
⑤ 1961、扶養者から配偶者に変わる。

2. 控除の問題
配偶者控除は、憲法25条で定める「健康で文化的な生活」を保障するものである。
控除の本来的な機能を否定するのは基本的に誤りであると三木氏は主張する。

前日の(上)で森信茂樹・中央大学教授は「憲法25条と関連させて基礎的控除などを説明する見解がある」と指摘して、「生活保障という観点から、税負担・社会保障給付後で補償するほうがはるかに効果的・効率的である」と述べている。この意見はどちらが効果的かということで、配偶者控除の本質を述べるものではない。

3. 適用要件の問題
これはどのように運用するかという問題で、人それぞれ意見があるだろう。
三木氏は①所得控除と税額控除のどちらが良いか、②現行の基礎控除を前提にして良いのか、をポイントとして掲げる。

最後に三木氏は「増税策の方便として女性の社会進出が強調されているように思われてならない」と締めくくる。

なお103万円の壁は「配偶者特別控除」という激変緩和策によって配偶者の収入141万円(103万+38万)までは徐々に配偶者控除が減らされることによって、思われているほど過酷なものではない。むしろ世論誘導の壁というべきかもしれない。
社会保険の106万円の壁に私たちの工夫が求められる。