GPIF運用方針の変更は年金受給者を豊かにするか


国民年金
国民年金制度の目的)
第1条 国民年金制度は、日本国憲法第25条第2項に規定する理念に基き、老齢、障害又は死亡によつて国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によつて防止し、もつて健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする。


安倍政権が政策目的(経済成長)のために年金資産の運用を利用するのは、年金制度の目的から逸脱している。
GPIFの運用は年金受給者のためにだけ行われるのが鉄則だ。年金資産を運用する組織は受託者責任を全うし、政治からの独立が確保される体制を確保することが必須である。

今回の運用方針の変更は政治主導で進められ、GPIFの運用資金は政府の財布になった。
政府の成長戦略には「GPIFの基本ポートフォリオの適切な見直しをできるだけ速やかに実施する」と記されている。「基本ポートフォリオの適切な見直し」がどのように経済成長に結びつくのか不明であるが、政府からの説明はない。


世界中を見渡しても、年金資金の運用をテコに経済成長を目指すという奇怪な経済政策を採用する国はどこにもない。政府は世界的にあり得ない年金資産を危機にさらすかもしれない政策を実行する説明責任を負うている。
10/31日経・大機小機の陰陽氏は「カルパースカリフォルニア州職員退職年金基金)は昨年9月に公表した所信で、『インデックスに連動する運用戦略を採用する。理由はアクティブ運用で付加価値が得られる確信や十分な裏付けがないことだ』と述べている」と指摘する。

カルパースの方針変更は年金資金が企業の動きを変えることはできないことを示す。出来るのは、経済成長の果実をどれだけ取り込めるかである。日本政府は、御用済みの運用方針に頼ろうとしている。どれだけの勝算を見込んでいるのだろうか。


政治家は過去の円高局面で、急激な市場の変化は好ましくないとコメントしてきた。ところが今回の追加緩和による急激な株高、円安については、全面的に好意的に評価している(10/31ロイター)。一人ぐらい原理主義的な頑固者がいても良いと思うがね。政治家の発言とは恣意的、選択的であるとしか言いようがない。

塩崎厚労大臣は「運用改革はもっぱら被保険者の利益になり、その結果として(経済)成長につながればいい」(9/24ロイター)と語ったが、どこまで政治の圧力からその立場を貫くことができるか。

10/31ロイター
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPL4N0SQ69K20141031
<サプライズ緩和を高く評価>
日銀の決定を受けて急きょ会見した甘利明経済再生担当相は「現在の金融経済情勢、今後の見通しを踏まえて対応されたもので、時宜を得た対応だ」と評価。追加緩和の狙いについて「デフレ脱却、物価安定目標の視点だ」とした。

麻生太郎財務相も「日本経済を後押しする力を発揮してくれる」と歓迎。「黒田総裁の決定を高く評価している」と述べた。

与党からも、谷垣禎一自民党幹事長が「デフレ脱却に向けたもので評価する」と語った。

9/24 ロイター
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPT9N0QD05F20140923

まず被保険者の利益が重要、結果として成長につながればいい=GPIF運用改革で厚労相

塩崎恭久厚生労働相は24日、都内で講演し、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)改革について「運用改革はもっぱら被保険者の利益になり、その結果として(経済)成長につながればいい」と語った。その上で「運用改革とガバナンス改革は一体。信頼、安心できるものにしていかなければならない」との考えをあらためて示した。