公的年金の運用 日本株式への投資は年金受給者の利益になるか

GPIFの資金運用についての議論が高まっているが、議論の方向は正しいのか。
また、報じられているように日本株式の投資比率を高めるのは年金受給者の利益になるのか。


先に日本株式への投資について。
10/21日経・一目均衡「30年で開いた世界との距離」は興味深い数値を示す。
15,000円前後の日経平均は、1986年3月ごろの水準と同じだと指摘する。
他方、他の主要株価指数は次のように動いた。

株価指数 1986からの上昇 為替変動(下記の表を参照) 円ベースでの上昇 28年間の年平均単純上昇率
NYダウ 9倍 0.594 5.346倍 19.0%
FTS100種 3.5倍 0.656 2.296倍 8.2%

為替レートの推移

外貨 1986年初 1986年末 1986平均 10/20相場 変動率
米ドル 202 158 180 107.07 0.594
英ポンド 290 232 263 172.54 0.656

1986年4月に入社した人が、毎月2万円(雇用者も同額を拠出したとする)とすると、今年9月末の資産残高は次のようになる。この人は50歳位で、運用対象が安全資産にシフトする時期である。

運用対象 拠出額、330月 運用後残高 コメント
日本株 13.2百万円 13.2百万円
アメリカ株式 13.2 47.78 平均的に上昇と仮定
イギリス株式 13.2 28.12 同上


相場のことなので今後もそうなるとはいえないが、株式投資の対象として日本株は最も魅力がない。というか、最近ようやく水面に浮上しただけで、ここ10年ほどは水面下に深く沈んでいた最もリスキーな資産だった。

このような実績があるので、10/22日経「日本株買い増しを、改革提言の伊藤氏」「外国株は慎重姿勢」には、全く賛同できない。どこからか強いバイアスがかかっているようにしか思えない。

公的年金の運用について、10/22日経社説「公的年金運用の信頼高める改革を急げ」が参考になる。
受託者責任と政治からの独立を強調する。
成長戦略の果実を享受するのが年金資産運用であるから、現政権のスタンスは逆立ちしているとしか言いようがない。