ESG投資は年金生活者の生活を豊かにしない

ESG投資は、代表的指数に比べて投資効率が悪い。米カルパースの投資担当理事がESG推進派からESG反対派に交代した。日経は次のように伝える。「6月末決算のカルパースの年間投資収益率は17年度で8.6%。代表的な米国の株価指数S&P500指数の12%を下回る。17年度まで5年間や10年間の運用成績も指数の上昇に届かない。」

ESGが効率的でないことは、ESGの旗振り役である日経がベンチマークとなるESG指数を公表しないことから分かる。日経平均やトピックスを下回る数値しか出せないからだ。
きれいごとでは投資の荒波を乗り切れない。

ESG投資 変調の兆し 2018/12/03 日経新聞
3日の日経平均株価は7営業日続伸となった。米中貿易摩擦をめぐる緊張緩和ムードの中で、株式市場には新たな懸念材料が頭をもたげつつある。企業のコーポーレートガバナンス(企業統治)などを重視する「ESG投資」に変調の兆しが出てきた。旗振り役だった米年金基金の幹部交代が波紋を広げる可能性がある。
 ESGは環境・社会・ガバナンスの英語の頭文字。こうした社会的な責任を果たす企業に投資する手法で、特に2016年以降の株高局面で注目され、国内でも関連ファンドの立ち上げが相次いだ。率先して取り組んできたのが全米最大の年金基金、米カリフォルニア州職員退職年金基金カルパース)だ。
 カルパースの運用資産は約3500億ドル(39兆円)あり、大きな影響力を持つ。全体のうち株式の比率が50%を占め、日本株への投資残高は1兆円規模とみられる。運用する全資産でESGに配慮してきた。17年にはトヨタ自動車に気候変動対策を強化するよう要請した。企業にも行動を働きかけることでも知られる。
 ところが19年1月、ESG投資を主導してきた理事のプリヤ・メイサー氏が退任、後任にESG反対派のジェイソン・ペレス氏が就任する予定だ。今年8月から10月に行われた役員選挙で、メイサー氏の得票をペレス氏が上回った。
 ペレス氏は「加入者の間にESGが恩恵をもたらしていないという考えがある」と当選理由を語っている。選挙ではカルパースの投資収益がESGによって抑えられ、退職者の年金生活を脅かしているとの指摘を繰り返してきた。
 実際、カルパースではこのところ運用成績が振るわない。6月末決算のカルパースの年間投資収益率は17年度で8.6%。代表的な米国の株価指数S&P500指数の12%を下回る。17年度まで5年間や10年間の運用成績も指数の上昇に届かない。
 ペレス氏は特にたばこや火力発電など、社会に害を及ぼすとされる企業への投資を自粛する「ダイベストメント投資」を進めることを問題視していた。ダイベストメントのような投資手法は社会の問題改善を促す。基金の加入者はこうした取り組みよりも、投資リターンを求めているようだ。