What Markets Will  by Paul Krugman

「10/16NYT What Markets Will 市場は何を意図しているか」から引用。

ここ数日の市場の混乱について、クルーグマン教授がコメントする。
You do, however, see a lot of policy crusades, and these are often justified with implicit cries of “Mercatus vult!” — the market wills it. But do those invoking the will of the market really know what markets want? Again, apparently not.
政策立案者から市場の声に耳を傾けという声を多く聞くが、彼らは市場が何を欲しているかを分かっているのか。何も分かっていないのは明白である。なお、ここでwill とは、動詞で意図するを意味する。

And the financial turmoil of the past few days has widened the gap between what we’re told must be done to appease the market and what markets actually seem to be asking for.
ここ数日の市場の混乱は、市場を落ち着かせるためにしなければならないと言われていることと実際に市場が求めていることのかい離が広まっていることを示す。

In fact, if you look closely, the real message from the market seems to be that we should be running bigger deficits and printing more money. And that message has gotten a lot stronger in the past few days.
実際、注意深く観察すると市場からの本当のメッセージは私たちは財政赤字を増やして紙幣をもっと印刷することのように思われる。そして、このメッセージは、ここ数日のうちに更に強まっている。

Instead, I’m talking about interest rates, which are flashing warnings, not of fiscal crisis and inflation, but of depression and deflation.
ここで述べているのは、株価ではなく金利のことである(この先に、株価は信頼できる指標にはならないと述べている)。点滅する警告が指し示すのは、財政危機やインフレではなく景気後退とデフレである。

この後教授は、政府は国債の発行をもっと増やして、インフラ事業に投資することを提言する。最後に次のように締めくくる。

In any case, the next time you hear some talking head opining on what we must do to satisfy the markets, ask yourself, “How does he know?” For the truth is that when people talk about what markets demand, what they’re really doing is trying to bully us into doing what they themselves want.
どんな場合でもオピニオンリーダーが市場を安定させるためにやらなければならないことを主張する時には、オピニオンリーダーはどうやって市場の要求することを知ることができるのかと自問しなさい。というのも真実は、彼らが市場が要求することを言うときには、彼らが本当にやろうとしているのは人々を脅して彼らが望む方向へ導こうとしているのであるからだ。


日本では消費税を引き上げないと市場の反乱が起きると主張する人がいるが、彼らは結局市場の反乱を予測できているのではなく、消費増税を実現するため国民に恐ろしい話を吹き込んで増税を実現しようとしているだけなのだ。


市場のことを分かっているように装いながら、とにかく政策意図(株価上昇)を実現したいという意欲は次の話でも明白である。

10/18日経「新任閣僚の資産公開」塩崎恭久厚労相
「私自身、株の投資に関心はない」とコメントしている。
「株の投資に関心はない」人がどうしてGPIFの株式運用に積極的になれるのだろうか。ぞっとする話だ。
また、分散投資を行うことによって安全、効率的に投資ができると述べているが(下記引用記事)、分散投資の意義を理解しているのか疑問である。アベノミクが始まる前に多くの企業年金日本株投資の比率を引き下げてきた事実を謙虚に振り返ることから運用の議論を始めるべきであろう。それとも今回は違うと主張するのだろうか。

日経 塩崎厚労相、年金積立金運用「分散投資進める」
2014/9/3 22:10
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK03H36_T00C14A9000000/

「年金の運用と改革の中身は専門家に任せるべきだ」。塩崎厚労相が記者会見した
 塩崎恭久厚生労働相は3日の初閣議後の記者会見で、約120兆円の年金積立金の運用について、「国債の運用に偏っていたものを分散投資して、安全で効率的な運用をする」と述べた。具体的な資産構成は「中身は専門家に任せるべきだ」と言及を避けた。
 積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は厚生労働省が所管する組織で、今秋に新しい資産構成の目安を発表する。