10/4 需要なくしてビジネスチャンスなし

10/4日経 「アジア内需 業績牽引」「利益、内外逆転相次ぐ」「今期、営業益27%増」
アジア主導の収益拡大について日経は、「成長するアジアの内需を取り込んで新たな成長の道を見出す企業が相次ぎ、海外利益が国内利益を上回る例も目立つ。それに伴って、本業の基盤強化や事業転換に経営資源を回す余力も拡大、収益の安定度の向上につながる見通しだ」と要約する。
つまりアジア各国が低法人税率を売り込んで日本企業の誘致に努めた結果、日本企業の収益が拡大したのではない。平凡なことだがそこに需要があったから事業を拡大できたということである。
このことは、安倍政権の成長戦略に疑問を持たせる。法人税をいくら下げても事業と雇用が拡大し、賃金の上昇につながるのか。税だけで外資企業がわが国に進出するのだろうか、と。仮に賃金上昇につながったとしても、国際競争市場で日本製品の価格競争力が人件費上昇のために失われれば、結局もとの木阿弥ではないか、と。
相場用語に逆張りと順張りという言葉がある。今の大きなトレンドは日経が報じるようにアジアの需要を取り込んだ企業が利益を成長させている。成長戦略は、その大きなトレンドに順張りで乗って行ってこそ効果があるのではないだろうか。
すなわち国家の企業支援は、これから海外へ出て行こうとする中堅、中小企業を支援することにありそうだ。一時的には国内雇用が失われ空洞化が拡大するというマイナス面はあろうけれど、長い目で見れば「本業の基盤強化や事業転換に経営資源を回す余力も拡大、収益の安定度の向上につながる」ことになるので十分な見返りが期待できる。他力本願の効果のはっきりしない法人減税にかけるというのでは心もとない。
これは農業についても当てはまることで、世界一コストの高い国内で今後どうやって農業所得を二倍にするのだろうか。政府の貴重な頭脳資源をそんな難問(愚問)に浪費させてはならない。簡単な答えは、農業自体をアジアに進出させ低コストで日本向け農産物を生産することである。日本の農業技術は最高だといわれているが、世界に出て初めて評価が定まる。ここでも耕作放棄地が急増するという一時的なマイナスが生まれるが、放棄地が増えれば増えるほど国内に残っている専業農家にはチャンスが出てくる面を忘れてはならない。
国内にある生産資源を海外に解放することにより、この国の将来は、モノ造りから投資立国、サービスで食べていく国になる。人口減少に対応する国家の姿であるといえないだろうか。