縮小均衡に陥ったシャープ

9/12/12 シャープ:何を残すか
シャープは縮小均衡のスパイラルに陥っている。このままでは会社そのものが消滅することさえあり得る。どのような方向へ進めるのが良いのか。

今日の日経の記事からの引用。
9/12/12日経 「給与削減幅7%に拡大」「シャープ、冬と来夏 賞与半減」

シャープは11日、国内で働くほぼ全ての従業員(約2万9300人)の給与と賞与を追加削減する経営改善対策を発表した。(中略)すでに希望退職などによる約五千人の人員削減を決めているが、事業環境の悪化に対応するため、人件費を一段と削減する。

今回の改善対策により、13年3月期の固定費を約140億円減らすことができるという。

縮小均衡のスパイラルで怖いのは、他から声のかかる優秀な人材から抜け出てどこへも行けない人だけが会社に残ることだ。そうなると会社は力を失い、自然消滅となる。それだけでなく、優秀な人材が好待遇で中国、韓国、台湾の会社に引き抜かれ、彼らが競争力を強化して日本企業を打ちのめすことになる。日本の雇用が何倍にもなって失われる結果となる。

シャープは、台湾ホン・ハイ(鴻海精密工業、Hon Hai Precision Industry)の支援が不透明となり自力での再建を模索しているようだが、現在の経営陣でこの局面を乗り切ることが出来るのか。

会社が苦境に陥ったとき、全ての利害関係者を満足させる解はない。誰かが会社が生き延びるために犠牲とならなければならない。シャープは従業員にその犠牲を負わせている。それは正しい方向か。

このような時に人々が問うのは、「会社は誰のものか」である。教科書には、
1. 株主主権
2. ステーク・ホルダー主権
が掲げられる。2のステーク・ホルダー主権には主なものとして、(1)従業員主権と(2)銀行主権がある。
これ以外に日本だけでなく世界の多くの企業で見られるのは、
3. 経営者主権、である。
企業が順調に業績を伸ばしているときは、それぞれのステーク・ホルダーに応分のリターンが配分され、経営者が主権を振るうことに異議を唱えられることは殆どない。


しかし、企業が存亡の危機に瀕したときに経営者主権は機能するか。
そのような時に、危機を脱する方法は次の様だ。
1. 現在の経営陣の下で再建に取り組む
2. 経営陣を入れ替える
3. 身売りする

シャープは1によって再建の道を目指そうとしている。これが成功するか否かは、先に見たように失敗して会社が消滅し、更に敵に塩を送るようになってしまう可能性まである。問題は更にあり、現経営陣が本当は2か3が好ましいと思っても、それでは自分で自分の首を切ることになるので人情としてなかなか決断しにくい。

このような有事になったときは、現経営陣は利害関係人のグループとして1から3の選択を行う当事者から外されなければならない。それが、1.株主主権であれ2.ステーク・ホルダー主権であれ、正しい選択を行うあり方である。これで成功したのは、ルノーに半数弱の株を持ってもらいカルロス・ゴーンを迎えた日産であった(2と3の折衷)。

シャープの取締役11名中、経営者兼取締役(社内取締役)は9名、社外取締役は2名である。迂遠に見えても、ここは取締役会を大改造して正しい判断と選択をすればシャープに復活の可能性は残されるだろう。技術と優秀な従業員を維持することである。仮に中国人や台湾人の経営者の下であっても、国内に雇用と技術が残されれば良い選択を行ったと評されるだろう。本当は、機関投資家物言う株主として経営に物申せばよいのだが、日本の機関投資家は物言わぬことが美徳と思っているようだ。