人気投票で決めるエネルギー・ミックス

与党民主党のエネルギー政策は、2030年に向けて原発依存度ゼロになりそうだ。「意見聴取会」や「パブリックコメント」、「討論型世論調査(DP)」の結果で、いずれも、「原発比率ゼロ」の支持者がもっとも多いからだ。

これをポピュリズム政治の極まった姿と評することが出来るが、それは置いておいて、すでに事実上の2012年における原発依存度ゼロになっている現状を見てみよう。

日本経済新聞 - 2012年8月13日
電気事業連合会が13日発表した7月の原子力発電所稼働率(設備利用率)は2.9%となり、8カ月ぶりに前月を上回った。関西電力大飯原発3、4号機が発電を開始し、国内で稼働する原発が1機もなかった6月の0%から数値が反転した。


2030年へ向けて原発依存度を、0%、15%、25%とする三案が提示されているが、その前提は震災後にいったんは震災以前の依存度30%に戻してそこから30年に向けて減らしていくというものであった。ところが、現実には日経が報じるように現時点において事実上の依存度ゼロとなっている。これを30%に戻すという意思や意欲は今の政府にはないようだ。

各依存度でのエネルギー比率は次の様であった。

摘要 原発依存度 火力 再生エネルギー (うち水力を除く)
2010年実績 31% 59 9.9 1.2
選択肢1 0% 65 35 不明
選択肢2 15% 55 30 不明
選択肢3 20−25% 45-55 25-30 不明

現状では、原発がほぼ3%、再生エネルギー10%とすると、火力が28%増しの87%となる。これが燃料費増加に伴う年間3兆円の国富流出の原因である。現状のおかしなエネルギー構成のつけを国民が払っているという構図である。それ以上にこのエネルギー構成に慄然とするのは、わが国のエネルギー構造の脆弱さである。事があったときに政治は責任を負いきれるのだろうか。

30%からスタートするとすれば、最終0%とするには18年間の間に原発依存度を年平均に均せば2%弱減らしていくことになる。実際には、技術革新やコスト低減から後半にいくほど弾みがつくというのが常識的な見方であろう。

2030年の理想を語るのは結構だが、それはあくまでも足元の現実をしっかりと固めることが始まりとなる。現状をあるべき経路に戻すというプロセスを示すのが責任あるエネルギー政策である。