野田首相は少しお疲れ?

野田首相は少しお疲れ?

ここに来て野田首相の周辺が騒がしい。離党者が続出し、気もそぞろなのだろう。メディアもこれまでの小沢氏悪人論だけではもたなくなってきた。

その中で、政府主催の「エネルギー・環境の選択肢に関する意見聴取会」に対する批判がかまびすしい。電力会社の幹部社員に発言させたり、地元出身ではない人を参加させたからだ。

野田首相は心配事が多すぎて物事をじっくり考える時間がなくなっているようだ。少しお疲れのように拝見する。大事な局面でなおざりになり大局を見落としているように見える。それを象徴するのが今日の日経の記事だ。

7/19日経「景気下支え、政策総動員」「首相が表明」

政府は2013年秋に14年4月の増税の是非を判断する。この時点で景気が低迷していると増税できなくなるため、前もって12年度補正予算と13年度予算に景気対策を盛り込み環境を整える考えだ。(中略)補正予算の財源は11年度決算での余剰金など約2兆円が有力だ。東北の被災地だけでなく、円高で製造業が苦戦している西日本でも景気対策を求める声は強い。

景気対策は、増税前と増税後の波を平準化し経済に余計なかく乱を与えないようにすることが必要だ。それはこれまでの何とかポイント制で、需要の先取りをして対象業界の業績のブレを拡大してきたことで十分に学習したはずだ。それをまた繰り返そうとしている。

増税前には駆け込み需要が発生し景気は過熱気味になり、増税後はその反動で景気が落ち込むというのが、前回の消費増税の経験であった。それに倣えば、2014年3月までは手綱を引き締め気味にし、4月からアクセルを踏み込むという政策の順序付けが必要となってくる。2014年3月まで目一杯景気刺激を行えば、4月から玉が尽きて駆け込みの反動とあいまって大幅な景気後退、結果、15年10月の10%への引き上げは断念というストーリーが一番ありそうだ。剰余金2兆円は、国債償還や復興増税の削減などに回して、その時に備えるのが賢明だろう。野田首相は14年4月8%の実現だけが頭にあって、その後のことは後は野となれ山となれの絶望主義に陥ったかのように見える。

参考:税率は2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げ。

このことは「エネルギー・環境の選択肢に関する意見聴取会」にも表れている。ここでは、野田首相はただ形だけ整えて何をやろうとしているのかわからない。日経社説は次のように批判している。
7/15日経社説「やっつけ仕事の“国民的議論”は残念だ」

聴取会や討論型世論調査は短期間のやっつけ仕事の感が否めない。国民的議論というなら、時間をかけ全国各地で開催を重ねて意見を聞くのが筋だ。

聴取会の性格をはっきりさせていないから、電力会社の社員が発言することに異論が出てくると、すぐに発言を止めさせるというのはポピュリズムの極みというべきだ。反原発派への迎合を最初から狙っていたとしたら巧みという評は与えられても、誠実とはいえないだろう。そうでなければ、聴取会はただ国論を二分するだけで国民の間の亀裂を深くするだけだ。二項対立は止めようと唱えているのに、自らはそれをあおるようなことになっている。
それ位のことは気付くはずだが、やっぱり野田首相はお疲れになっていて、なかなか落ち着いて物事を考える余裕は無いようだ。オスプレイ導入、尖閣諸島国有化、マニフェスト不賛成者への公認問題などでももがいているだけという風にしか見えず、痛々しい。