日経・大機小機「大盤振る舞いと増税」夢風氏

2/14(火) 日経・大機小機「大盤振る舞いと増税」夢風氏

何が何でも増税ではなくて、考え方の筋道を示すのが本コラムの夢風氏だ。野田政権は財政の建て直しを強調するが、四次補正(2.5兆円)で浮いた国債利払い費(1.2兆円)や税収の上ぶれ分(1.1兆円)を使いきったり、一日の為替介入で8兆円を投じるという穴の開いたバケツのような財政運営を行っている。夢風氏は、民主党の不誠実さを的確に指摘している。そこを正さなければ、増税による税収増も民主党というタックス・イーターに飲み込まれてしまう。

そもそも増税は良くて民間の貯蓄を国に移すだけで国全体の貯蓄は変わらない、下手をすると景気悪化から全体の貯蓄が減るという怖い面がある。それでも増税を行うのは、国の方が民間より賢くお金を使えるという思い上がり(!)があるからだろう。これまでの誤りから謙虚に学習するのが回り道に見えても確かな道筋だと思われる。

大機小機:大盤振る舞いと増税


 
消費税増税論議が活発化している。日本の財政赤字は深刻なうえ、高齢化によって社会保障のコストはかさむ一方だ。したがって、このさい国民が負担を増やすこともやむを得ない――。日本の国民は善意に受け止め、経済界も主要メディアの多くも、少なくとも方向としてはそれを支持している。

 しかし、増税の前にもっと基本的な経済・財政の姿を議論する必要はないか。大枠の数字を眺めていると、疑問が生じる。ずばり増税は「大盤振る舞いの後始末」「マニフェスト政権公約)失敗のツケ」ではないのか。

 今回の消費税率5%引き上げによって、政府は約13兆円の税収増を期待する。一方、今国会に提出された2012年度予算の一般会計歳出規模は実質94兆円、いわゆる隠れ借金を含めると96兆円だ。実はリーマン・ショックの前まで、この規模は約82兆円だった。わずか4年ほどで、歳出規模は(復興のための補正予算を除いても)実質14兆円拡大している。この間日本の国内総生産(GDP)は拡大していないのに、歳出規模だけが2割も大きくなっていた。

 消費増税で調達される13兆円は、歳出の拡大規模とほぼ一致する。一般には高齢化で社会保障費が拡大するといわれる。しかし政府自身が認めているようにその額は年間1兆円、5年で5兆円だ。したがって約10兆円の金額が、社会保障の自然増以外によってもたらされている。12年度の予算でも、整備新幹線は3区間すべてで着工、エコカー減税の継続など、かつての自民党族議員も驚くような大盤振る舞いがなされている。

 民主党マニフェスト(09年)では、事業仕訳などで17兆円のムダを削減するとされてきた。しかし実際に削減されたのは2兆円程度だった。差額14兆円は、予算規模の実質的な拡大幅と一致する。

 今回の増税が以上のような意味で「大盤振る舞いの後始末」「マニフェスト失敗のツケ」ならば、財政再建社会保障充実もできないことになる。政府資料や国会答弁によっても、今回増税してもその後さらに税率引き上げが必要なことが示されている。また5%の増税を行っても、そのなかで実質的な意味で社会保障充実に回るのはわずか1%であることも示されている。

 消費税政局を論じる前に、経済政策としての増税をもっとしっかり議論しなければ、日本は大きく道を誤ることにならないだろうか。(夢風)