日経 今週の電力に関する記事

今週の日経は電力・エネルギーに関する特集が満載であった。

1. 日経特集記事「エネルギーを問う」「第4部東電公的管理」
2/4(土)電力改革の実験場「国策国営 深まるジレンマ」
2/5(日)「火力」売却の胸算用「競争促進 燃料調達が壁」
2/6(月)「特別扱い」は終わり「市場との信頼、ゼロから」
2/7(火)定まらぬ原発政策「遠のく安定・安価な電力」

この特集で電力市場(狭義)をどのように設計するかという論点が落ちているが、公平な記事である。財政問題のような強引な付会のないのがよい。ただ、この特集で論じきれないのは、政府による1兆円の資本注入の回収(出口戦略)である。1兆円の回収を優先させるなら、値上げ容認、原発早期再開、火力売却せずとなって、政府の方針がすべて覆ってしまう。「忠ならんと欲すれば孝ならず。孝ならんと欲すれば忠ならず。重盛の進退ここに谷(きわ)まれり」という平重盛の言葉が思い起こされる。
たぶん別の方法で資金回収を考えているのであろうが、外野がとやかく言っても下種の勘繰りといわれるが関の山だ。2の日経社説は考えさせられる(悪い意味で)。どう見ても政府は社会主義政策の実験をやろうとしているとしか見えない。


2. 2/8(水)社説「料金見直しを電力市場の競争促す一歩に」
経済産業省有識者会議は料金を抑えやすくするため、原価として含めることができる電力会社の人件費に上限を設けるなどの案をまとめた」

こんな努力をあざ笑うのが「4. 電力取引、米で活況」である。民間の活力を引き出すのが政策の要諦であると思うのだが。


3. 日経経済教室「新エネルギー戦略」
2/7(火)世界の資源地図、激動期に 「中心は中東から米へ」「シェールガスなど登場で」
2/8(水)「再生可能」の限界 認識を 「火力発電技術生かせ」「電源の構成、市場原理で」
2/9(木)自給率の向上、政策課題に 「多様な供給源を確保」「原発の安全向上に全力を」

原発が機能不全になった今、電力供給の大宗は火力である。火力エネルギー源を中心課題とした経済教室は時宜を得ている。


4. 2/11(土)FT「電力取引、米で活況」「価格変動の大きさ魅力」
「電力卸取引所PJMの電力価格は1時間に10%の変動もざらだ」「電力はガス以上に価格変動が激しい。貯蔵ができないため需給を絶えず一致させる必要がある。電力会社には停電回避義務があり、短期の供給不足でも別の供給を止めるわけにはいかない」「トレーダーは翌日受渡しの卸電力取引を入札で決める市場で、電力を購入しておくと、一日の適当な時間の取引で利益を得ることができる」

ペンシルバニア州での電力卸売価格が30ドル/MW/Hのとき、バージニア州での電力スポット価格は292ドルであった、という。経産大臣は目をむくかもしれないが、それが経済のダイナミクスで民間の英知が結集されるチャンスである。政策の流れが市場創設、市場活性化の方に向かうのだろうか。