オリンパスの上場維持

オリンパスの上場維持

1/21日経は次のように報じている。

東京証券取引所自主規制法人20日に開いた臨時理事会で、オリンパスの上場維持を決めた。調査の結果、決算を訂正しても上場廃止基準には触れておらず、本業の利益は偽っていなかったと認定。「投資家の判断を著しくゆがめたとはいえない」と結論づけた。ただ、企業統治に問題があるとして執行猶予にあたる「特設注意市場銘柄」に指定。内部管理体制の整備や法令順守の徹底など、不正再発を防ぐための経営改革を3年以内に具体化するよう求めていく。

東証の決定に身におぼえのある上場企業(もし、あれば)はホッとしたことであろう。そう思ってしまうのである。この決定がひとつの相場観になって市場からの企業統治改革の圧力はなくなった。
もしこれが上場申請を行っている会社であったら、100%上場承認は得られなかった、と断言できる。つまり、上場「村」に入れば身内同士で規律は働かなくなるという典型的な日本社会の空気だ。東証がこれからいくら企業統治改革を叫んでも耳を傾ける方はいないだろう。

類似事例として日興コーディアルグループの不正会計問題(末尾の引用を参照)があったが、日経の報道では、「最終的には上場維持と判断されたケースなどと比較し、上場廃止に当たるとまではいえないと結論づけた」ということのようだ。

それ以上に見物なのは、ますます奇観を呈するオリンパス企業統治体制である。
1. 監査役会に属する「取締役責任調査委員会」は、現取締役中3名の社内取締役と2名の社外取締役を除く取締役を善管注意義務違反ありとして、監査役会は現取締役6名(代表取締役を含む)を訴えている。これに対し、取締役会の「監査役等責任調査委員会」は現監査役全員が取締役の業務遂行について監視・監督を怠っていたとして、取締役会は全監査役を訴えている。取締役会と監査役会は重大な利益相反の立場に置かれていることになったのである。これで、まっとうな企業統治を行っていけるだろうか。

2. 1/17に設置された指名委員会は臨時株主総会で選任される取締役と監査役の候補者を決定する。指名委員会は、「取締役責任調査委員会」でシロと認定された2名の社外取締役から構成される。2名は2011年に選任され事件との関わりは無いと思われるが、被告となっている元代表取締役の主催する取締役会で候補者とされ、マイケル・ウッドフォード氏の代表取締役解任には決議に加わっていると推測されることから、まったくのシロとまではいえないだろう。しかし、これ以外に指名委員会の適任者はおらず止むを得ない面もあるというべきである。

3. それ以上にこっけいなのは、「指名委員会は、経営改革委員会のご承認を得た上で、上記開催予定の臨時株主総会において選任すべき取締役および監査役の候補者を決定いたします」とある点だ(末尾、「1/17/12 指名委員会の設置に関するお知らせ」を参照)。
「経営改革委員会」が承認しない限り指名委員会の決定が決まらないのである。「経営改革委員会」は弁護士などの中立的な第三者から構成されているが、株主からのオーソリゼイションは得ていない。どんな正当性があって、「経営各委員会」が株主から信任されている指名委員会や取締役会の上に立って「承認」するのか。

4. このようにオリンパス企業統治体制がおかしな方向へ流されていくのは、元代表取締役の体制を正当化しょうとした出発点にある。事件が明るみに出た時点で、全取締役・監査役は辞任し、速やかに臨時株主総会で新たな取締役・監査役を選任すべきであったのである。いかに元代表取締役の体制が強固であったとしても、事件が発覚した時点で取締役会はまともな判断に立ち返るべきであった。

5. 過ぎたことを悔いても何の足しにもならない。今できることは、正当性に疑問がもたれる「経営改革委員会」を解散し、指名委員会の社外取締役は全身・全霊を尽くして株主本位に新たな統治の主を選び出すことだ。訴えられた取締役、監査役は、臨時株主総会後に辞任するという発言を取り消して、直ちに辞表を提出すべきである。そのためにも、速やかに臨時株主総会を開催しなければならない。


日興コーディアルグループの不正会計処理問題 (ウイキペディアより)

2006年(平成18年)12月18日、証券取引等監視委員会日興コーディアルグループが傘下の投資会社の決算上の数字の扱いについて不適切な処理を行い、およそ180億円の利益を水増ししたと指摘。この決算に基づいて、日興コーディアルグループが500億円の社債を発行していたため、内閣総理大臣金融庁長官に対し、5億円の追徴金を課すよう勧告した[1](証券取引法第172条第1項第1号に基づく処分)。


10/14/11 代表取締役の異動に関するお知らせ

本日、同氏に対する代表取締役・社長執行役員の解職 (代表取締役及び社長執行役員のいずれからも解職し、業務執行権のない取締役とすることを)を、特別利害関係があるために議決に参加しなかった同氏を除く出席取締役の全員一致にて決議いたしました。また、これに伴い、代表取締役会長の菊川剛が本日付で社長執行役員を兼任することも決議いたしました。


12/7/11 第三者委員会の調査報告書を踏まえた当社の対応について

当社監査役会は、(中略)、取締役責任調査委員会を設置することを決議しました。(中略)
当社取締役会は、監査役等責任調査委員会を設置することを決議しました。


1/17/12 指名委員会の設置に関するお知らせ

なお、指名委員会の設置につきましては、同取締役会決議に先立ち、経営改革委員会よりご指導を受け、同委員会のご承認を受けております。
(中略)
指名委員会は、経営改革委員会のご承認を得た上で、上記開催予定の臨時株主総会において選任すべき取締役および監査役の候補者を決定いたします。