1/28日経「米、2.8%成長に加速」「10〜12月年率 消費・住宅投資牽引」

1/28日経「米、2.8%成長に加速」「10〜12月年率 消費・住宅投資牽引」

記事の要約;

• 10年4〜6月期(3.8%)以来、6四半期ぶりの高い伸びとなった。
個人消費が2.0%増と、前期と比べてプラス幅が0.3ポイント広がった。
• 民間住宅投資の伸びは10.9%と、7〜9月期の1.3%から大きく広がった。住宅価格の下げ止まりの兆しが追い風となって、新規着工が比較的順調に推移したと見られる。
• ただ、雇用情勢や欧州債務危機など懸念材料も多く、米景気が安定して拡大基調を続けられるかは不透明だ。

日経は米景気の回復には懐疑的であるが(「黒字が消える」という特集と整合的である)、どうも今回は少し基調が変わってきているようである。それを示すのが、ポール・クルーグマンの1/22NYTコラム「Is Our Economy Healing?_」と1/24オバマ大統領の一般教書演説である。


ポール・クルーグマンの1/22NYTコラム「Is Our Economy Healing?_」
クルーグマンは慎重な楽観主義と断りながら、これまで何度かあった偽りの夜明けとは違ってこれまでの景気低迷の原因となってきた二つの要因がようやく解消されつつあると指摘している。それは、住宅バブルの後遺症と民間の過大な債務である。

住宅バブルの後遺症について。
住宅バブルが縮小し始めたのはほぼ6年前からで、住宅価格は2003年の水準に戻っている。歴史的水準に照らし合わせると、現在は大幅な住宅の供給不足になっている。それでは、なぜ人々は住宅を購入しょうとしないのか。それは、長引いた景気低迷で購買力を奪われたか、将来への不安からリスクをとって住宅を買おうとしないからだ。このことは、好循環への転換の可能性があることを示している。最近の統計を丹念に見ると、住宅販売は上昇している、失業保険の申請は下がっている、建築業者の先行きの見通しは強気になっている。

民間の過剰債務について。
民間の過剰債務が削減されつつあるので、上記の「好循環」の可能性は高まっている。今回の景気低迷の真犯人は、クルーグマンのような真剣に景気低迷の原因を探求してきたものにとって、民間の過剰債務、特に家計の債務である。この民間の債務が金額ベースで減少してきて、GDPに対する比率でも2008年末から大きく減ってきている。

10〜12月期の成長の推進力が住宅であったのは、クルーグマンの分析と符合している。クルーグマンの楽観主義は捨てたものではなさそうだ。もちろんかく乱要因には事欠かないが。


もうひとつはオバマ大統領の一般教書演説である。
アメリカの生産性は高いので、もはや中国で仕事をすることは高くついて製造業がアメリカに回帰すると主張している。

What's happening in Detroit can happen in other industries. It can happen in Cleveland and Pittsburgh and Raleigh. We can't bring back every job that's left our shores. But right now, it's getting more expensive to do business in places like China. Meanwhile, America is more productive. A few weeks ago, the CEO of Master Lock told me that it now makes business sense for him to bring jobs back home. Today, for the first time in fifteen years, Master Lock's unionized plant in Milwaukee is running at full capacity.

海外に仕事を移す企業に報いる制度は廃止し、国内で雇用を創出する企業を報いるよう税制を改革することを訴えている。

My message is simple. It's time to stop rewarding businesses that ship jobs overseas, and start rewarding companies that create jobs right here in America. Send me these tax reforms, and I'll sign them right away.

設備投資と雇用増が推進力となり、アメリカの景気回復はかなりのものとなる可能性がある。日経が心配する「黒字が消える」は杞憂となろう。そもそも「黒字が消える」は、「国債の信任維持 総力で」とあるように、無理やり債務の問題に結び付けようとして経済の動向を分析しているものではない。経済的な分析があっての債務の問題の解析であれば良かったのだが。