低成長はサービス社会の必然なのか

11/27日経経済教室「AI・ロボットの可能性と限界」ダニエル・コーエン、パリ経済学校教授の見方から日本経済を考える。

コーエン氏は、1948年に経済学者ジャン・フーラスティエが著書「20世紀の大いなる希望」で、社会は農業社会、工業社会の後にはサービス社会に移行すること提唱したことを紹介する。フーラスティエは同時に、サービス社会では、経済成長がないことを指摘した。なぜなら、時間には拡張性がないため賃金は伸び悩むからだ。

 

このことは、理容業のQBと半導体の集積率は18ヶ月で2倍になるというムーアの法則を比べれば、容易に納得できる。QBは、1時間最大6倍の生産性向上を成し遂げたが、それ以上に生産性を上げるのは難しい。ムーアの法則は、そろそろ限界に近づいているという指摘はあるものの、その伸びは顕著であった。

 

コーエン氏は、また、経済分析では収穫逓増の規模の経済という概念は重要だと指摘する。企業活動はコストをほとんど増やさずに生産を拡大させるというメカニズムを始動させないと、いずれ停滞を余儀なくされるとも指摘する。

 

日本の場合サービス社会への移行に加えて、人口減少がこれに拍車をかける。英米のほうがサービス化は進んでいる(注)が、人口はむしろ増加しているので、サービス社会の停滞は目立たない。

(注)11/30日経「New Economy 所得と消費に広がる溝」は、製造業の雇用者数に占める比率を次のように紹介している。

アメリカ  ピーク(40年代) 4割近く  現在 9%弱

日本    ピーク(60年代) 4割弱   現在 17%

 

日本の経済政策は、サービス化と人口減少というこれまでなかった要因を織り込まなければならない。工業化と人口増加が後押ししたバブル以前の経済政策を繰り返すだけでは、時代に取り残される。