「労働流動化の絶対視 避けよ」と主張する猪木武徳名誉教授

生産性向上には、解雇規制緩和などによる労働市場流動化が必要とされている。

これに対して、猪木武徳大阪大学名誉教授はその主張は実証されてはいないと唱える。

 

6/25経済教室「働き方改革の視点」猪木武徳名誉教授は、「労働流動化の絶対視 避けよ」と主張する。

  1. 非正規のわなに陥っているケースと、非正規が正規への踏み石となっていることを識別すべき。
  2. 労働移動に伴う技能習得コストが論じられることは少ない。解雇の場合、労働者への経済面・健康面への影響はどの程度なのか。米の検証では、10-15%の報酬の低下が見られる。
  3. もし教科書的命題、すなわち生産要素の再配分による効率性が成立していれば、企業間の生産性の散らばりは減少するはずだが、そうした現象は観察されていない。多くの技術革新の成長への貢献は既存企業によるものであり、労働移動が労働生産性を高めるとの説の根拠は薄弱である。

 

以上のような指摘をしたうえで、非正規の内実を概念的に識別して、それぞれのタイプの機能と量を把握することが必要であると述べる。そして、どの類型の非正規がいかなる不公正な処遇を受けているのかを確定して、正規への転換を可能にするような企業内訓練を企業や組合が行うことが必要であると主張する。