トランプ経済政策の評価

トランプ経済政策は評判が悪い。過激な言葉に対する印象論のように思える。
筋道を立てて考えると結構まともだ。
トランプ経済対策が、もし実現したら、どのような結果をもたらすかを検討してみよう。

1. 短期
トランプ大統領は大幅な減税と大規模な公共投資を提唱している。これらが実施されると、消費と投資の両面から国内需要が増加する。ここで、国内に十分な供給力があれば国内需要の増加に対応できるのだが、残念なことに殆ど供給余力はない。このことは毎月の貿易収支赤字が400億ドル前後で推移していることから明らかだ。
したがって需要を膨らませても殆どが貿易赤字が増えることになる。このことはレーガン大統領(1981年1月20日 – 1989年1月20日)の時代に輸入が急増したことでも確かめられる。トランプ氏には残念だが、この時点で貿易赤字を解消するという目標は達成されない。

2. 中期
財政赤字貿易赤字を膨らませるだけではレーガン時代の繰り返しになる。トランプ氏は国内の供給力を増やすために、保護主義的に見えることでもとにかく何でもやってみようと試みる。為替への口先介入もその一環である。為替介入はレーガン時代にもプラザ合意(1985年9月22日、先進5か国 (G5) 蔵相・中央銀行総裁会議により発表された)があった。日経はトランプ氏の口先介入を無知、誤解、気まぐれとさんざんに評するが、プラザ合意が再現されることを心配したほうが良いのではないか。

トランプ氏のなりふり構わぬ製造業の国内回帰誘致が実現できれば、どうなるのか。

3. 長期
(1)ベスト・シナリオ
雇用の改善が進み(今でも完全雇用に近いので雇用者数の増加は期待できない)、消費が拡大し、国内生産の増加とともに設備投資も増える。アメリカ経済の供給力は拡大し、貿易収支は改善する。この場合、トランプ氏の唱える成長率4%が視野に入ってくる。トランプ・ラリーはこのシナリオを幾らか反映しているのかもしれない。
(2)失敗する
アメリカで生産するとコスト高になり、実質物価が上昇し、消費が縮小する。また、完全雇用に近い現状から、インフレだけが進むこともありうる。

NAFTAを利用する日系企業には国境税などは災難だが、参加国のルールを利用していただけなのだから、新しいルールに従うしかない。

(参考:NAFTA
1992年12月17日、テキサス州サンアントニオで首脳会談が行われ、NAFTAは署名された。アメリカのジョージ・H・W・ブッシュ大統領、カナダのブライアン・マルルーニー首相とメキシコのカルロス・サリナス大統領は皆、協定の推進の先頭に立ち、正式に協定に署名する際の責任を負った。署名された協定はその後、立法府または議会による批准を必要としていた。

交渉が妥結する前にアメリカではビル・クリントンが大統領に、カナダではキム・キャンベルが首相に就任し、さらに協定が施行される前にカナダでは、ジャン・クレティエンが首相に就任した。