日経の賃金分析記事

5/4日経「賃上げ 統計に表われず」「政府の音頭で広がるが・・・・」では、「14年の現金給与総額が速報段階の前年比0.8%増から0.4%増に下方修正され、賃上げ効果が実に半減してしまったのだ」という分析記事があった。

日経の記事では、速報から半減したもののなお賃上げ効果があったとしているのだが、ベアなどの影響を見るには所定内給与で比較しなければならない。所定内給与は、「14年暦年の所定内給与は、それまでの前年比0.0%から同0.4%減少に修正された」ので、政府の音頭にかかわらずベアの影響はなかったのである。

現金給与総額は、残業代やボーナスを含めた金額であるから、それらを全部かき集めても0.4%しか増えなかったということである。現金給与総額が下方修正されたことは誤りではないが、所定内給与が減ったという事実を報じないのは、読者を誤解させる。現金給与総額が下方修正された0.4%は、所定内給与が下方修正された0.4%と同じであるのだから尚更である。

政府の音頭によるベアに効果がなかったことを認めたくなくて重要な事実を伏せているとしたら、読者を馬鹿にしている。

「賃上げ 統計に表われず」という見出しも、ミスリーディングだね。見出しだけを見れば、実態は良いのに統計がおかしいという印象を持ってしまう。だんだん安倍首相の言い方、誰々には誤解があるのでそれを正さなければならない、に近づいてきている。

厚労省:毎月勤労統計調査で使用されている主な用語の説明
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/yougo-01.html
「きまって支給する給与」(定期給与)とは、労働契約、団体協約あるいは事業所の給与規則等によってあらかじめ定められている支給条件、算定方法によって支給される給与のことであって、所定外労働給与を含む。
「所定内給与」とは、きまって支給する給与のうち所定外労働給与以外のものをいう。
「特別に支払われた給与」(特別給与)とは、調査期間中に一時的又は突発的理由に基づいて、あらかじめ定められた契約や規則等によらない労働者に現実に支払われた給与や、あらかじめ支給条件、算定方法が定められていても、その給与の算定が3ヵ月を超える期間ごとに行われるものをいう。
 また、夏季、年末賞与等のようにあらかじめ支給条件は決められているがその額の算定方法が決定されていないものや、結婚手当等の支給条件、支給額が労働契約等によってあらかじめ確定していても非常にまれに支給されたり支給事由の発生が不確定なものも含める。
「現金給与総額」とは、「きまって支給する給与」と「特別に支払われた給与」との合計額である。