8/22日経「複眼、物価高に向き合う」を読んで、

4人の識者・実務家の意見が掲載され、記者がアンカーとして取りまとめる。

 

第一生命エコノミスト・新家義貴は「高い上昇は長続きせず」「コストプッシュ型のものであり、持続性はない」「物価高による消費の下振れでいずれ販売価格の引き上げもしにくくなる」と述べる。確かに物価の動きは指摘するようになるかもしれないが、その論では、消費者は我慢していれば近いうちに物価が元に戻るから辛抱しなさいと、政策への言及がない。

 

東大教授・渡辺努は「賃上げ急ぎ消費下支え」と提言する。「賃上げには生産性向上が必要との声もよく聞くが、生産性が上がらない中でも賃上げ進める必要がある」と主張する。

 

FP・竹下さくらは「高校の家庭科で金融教育を扱うようになったのは前進だ」と指摘し、「金融教育というと、投資や資産運用が話題になりやすいが、大切なのは家計の管理だ」として「給与明細の内容を理解することが必要だ」と述べる。

従来の金融教育が投資・運用に偏っていたことを、入り口の給与明細から始めよというのは、当たり前すぎてごく自然だ。従来の投資・運用論は業者の思惑に影響され過ぎていた。

 

これらの意見を集約するのが記者のアンカーだ。

物価高は長続きしないというのがエコノミストからよく聞く声であるとする。これがメインシナリオであるが、異なる展開として人々の物価観が変わる場合であるとする。

 

新家氏と同じくインフレを制御するのは物価高であるとする、毒を以て毒を制する論である。

ここまでは経済学から理解しやすい。ところが、急に人々の物価観へと心理学に展開するのは不可解である。

人々の心理が変わるなら、もっと強い政策対応が要請されることになろう。それへの提言がないのは、第三者的と評されよう。