アベノミクス:財政再建への道筋

6/1日経 「骨太の方針明記へ」「社会保障聖域とせず」「70〜74歳の医療費、自己負担上げ検討」

本気で借金を減らせるのか、それはよい試みなのか。


日経の「骨太の方針、素案のポイント」によれば、「国・地方の基礎的財政収支(GDP比)の赤字を15年度までに10年度比で半減、20年度までに黒字化。21年度以降は債務残高を安定的に引き下げ」となっている。これが甘利経済再生担当大臣の唱える第4の矢。

2007年度からの基礎的財政収支の推移(下記参照)を見ると、2013年度の39.4兆円を黒字化するのは野心的過ぎるように見える。消費増税5%によって12.5兆円の税収増プラス社会保障費の見直しを中心とする歳出削減が27兆円ほどという目論見なのだろう。


絶望的な数値のように見えるが、まだ取り戻す道はある。それは次のようなアプローチ。
1. 08年から12年にかけてはリーマンショックによる景気下支えや震災復興のための臨時支出が10兆から20兆円あった(正確な数値は当初予算+補正予算の数値を入手してから)。今後この臨時支出が無くなって行くと予想され、歳出面での圧力は緩む。景気にはマイナス効果。

2. 税収は07年の51兆円から13年には43.1兆円へ約8兆円減っている。今後の景気回復に伴い、税収増が期待できる(銀行や自動車などの主力産業での納税が期待できるようになりつつある)。

3. 大胆な金融緩和により名目値で3%のGDP増加が期待できる(実質1%プラスインフレ2%)。名目GDPは2年ほどで07年の500兆円へ回復する。名目GDPの増加は税収増をもたらす。2とも重複するが、景気回復期には税収弾性値は財務省の1.1(長期的なすう勢値)以上になると予想される。

4. これらを踏まえて第1段階の目標は08年の赤字比率3.9%を目指すのが穏当ではないだろうか。それが達成できて07年の1.8%が視野に入ってくる。ここまでくれば、赤字が制御可能な範囲に入ってくる。

5. 早急に消費税増に走るのは、財政支出を10兆から20兆円減らすこととダブルパンチになって97年橋本デフレの再現を引き起こす恐れがある。税収増は実力に見合った自然増収を頼みとすべき。消費増税論者がこれから税収が増えるという時に法人減税を唱えるのは不可解である。

6. 消費税創設の89年4月後、税収が増えたのは2期だけ。消費増税(3%から5%)の97年4月以降は全て減収となっている事実を謙虚に受け止めないといけない。消費増税論者は、財政規律派の見かけとは別に税収減を意図して財政悪化のスピードを加速することを望んでいるように見える。そういえば与謝野馨氏も野田前首相も財政規律派のように振舞っていたが、実際にやったことはプライマリーバランスをひどく悪化させたことだった。


2007年度からの基礎的財政収支(赤字額)の推移。平成25年2月28日内閣府「国・地方のプライマリーバランス等の推移」(国単独の数値を引用)(一般会計税収は財務省HPより引用)
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h25pb.pdf

- 年度 基礎的財政収支(赤字額、兆円) 対GDP比(%) 名目GDP(兆円) 一般会計税収(兆円)
1 2007 9.0 1.8 512.9 51.0
2 2008 18.9 3.9 501.2 44.3
3 2009 38.1 8.0 471.1 38.7
4 2010 31.9 6.7 482.3 41.5
5 2011 36.1 7.6 470.6 42.8
6 2012 39.9 8.4 475.8 42.6
7 2013 39.4 8.1 480.2 43.1