12/7 オリンパス 高山社長記者会見

12/8/11日経一面「オリンパス役員 総退陣へ」
報道の要旨は次のとおり。

オリンパスは7日、損失隠し問題に関する第三者委員会の報告を受けて高山修一社長が記者会見し、現在の役員全員が退任する意向を表明した。来年2月中にも臨時株主総会を開き、経営体制を刷新する。新設する「経営改革委員会」に大きな権限を持たせ、現経営陣が株主総会に提案する新体制や事業見直し案などを事前にすべて審査する。他社との資本・業務提携や資産売却を検討していることも明らかにした。

その他記事中からの主な項目。
(1) 新設する「経営改革委員会」(*)は、第三者委員会の報告書で提言された「ガバナンス刷新委員会」や「経営監視委員会」を受けたものと思われる。記事の中で「取締役会に指導・勧告する」とあるので、取締役会に付属する委員会であろう。
(2) オリンパスは他社との資本・業務提携に触れているが、事件発覚により企業としての存立が危うくなったのではないから、ここでは蛇足というべきである。
(3) 同様にオリンパスは財務体質改善のための資産売却の方針を示すが、これも蛇足である。
(4) 「取締役責任調査委員会」(*)が「善管注意義務違反に当たる行為があった」と判断した取締役には、監査役が損害賠償請求訴訟を起こす。
監査役等責任調査委員会」(*)は監査役執行役員、会計監査人の責任を調べる。
(*)12/7/11プレス・リリース「第三者委員会の調査報告書を踏まえた当社の対応について」では、その位置付けは明確になっていない。


オリンパス、第三者委員会、日経に共通する認識の甘さは、経営と企業統治を峻別しないことから来ている。例えば、記事中「経営改革委員会は企業統治や法令順守など経営上の重要課題」としているが、法令順守はそうだとしても、企業統治を「経営上の重要課題」とするのはまったくの見当はずれである。経営があってそれを監視するのが企業統治であり、企業統治が経営に包含されるような認識では企業統治の定着は望み薄だ。両者は相対立する緊張感のある関係であることを今一度認識してもらいたい。


「経営改革委員会」は「取締役会に指導・勧告する」委員会であるが、取締役会はその「指導・勧告」を拒むことが出来ない権限を有しているように受け取れる。しかし、「経営改革委員会」にそれほどまでの権限を持たせる根拠は何なのか。株主主権に対する越権ではないか。また、取締役会の責任放棄でもある。何のいわれがあって株主に選ばれたのでもない「経営改革委員会」に取締役会がひれ伏さなければならないのか。「経営改革委員会」があっても、株主主権の建前からは、それはせいぜいアドバイザリー・ボードで助言機能しかもち得ないはずである。それ以上に、取締役会が判断停止して機能停止することが企業統治の確立とは真逆の方向へ向かうことを認識しなければならない。誤りに気付いて「経営改革委員会」なる迷案を取り下げるのかを見守りたい。


2月に取締役選任の臨時株主総会を開催することは、是非は別として、一部主要株主が株主提案による臨時株主総会を求めていることから、予想された動きである。

臨時株主総会の招集通知には、会社提案の取締役候補と、おそらく株主提案の取締役候補が併記されることになろう。招集通知が手に入れば、それぞれの主張の正当性を考えて見ることが出来る。それによって、それぞれのグループが企業統治をどのように考えているかが明らかになろう。

そして次に株主がどのような判断を下すかである。その国の政治の質は国民の質によるという言葉がそのまま適用されるなら、その国の企業社会の質は株主の質によるということになる。

今日の日経は、これ以外に「法制審中間試案」「東電社長インタビュー」など突っ込みがいのある記事が満載である。とてもそこまで手は回らないので、それらは明日以降にコメントしたい。