リニア新幹線へ国の介入:制約条件の理論 - TOC (theory of constraints)

民間のリニア新幹線プロジェクトに政府が補正予算で金を出して、品川・大阪間を同時開通することが伝えられている。
政府が民間のプロジェクトに相乗りするのは政府の経済構想力の貧困さを示している。「民に出来ることは民に」という小泉首相の教えはとっくに忘れられたようだ。JR東海は昔の国鉄という意識そのものだ。

そもそも金を出せば工事が進むというのは滅茶苦茶な発想だ。JR東海は①品川・名古屋(27年開業)、②名古屋・大阪(45年開業)の二段階の工事を計画していた。これは資金調達の問題があったかもしれないが、それ以上に自社の工事管理能力、ゼネコン、土木会社の施工能力、作業員の確保、未知の工事の難題対処、残土の処理、環境問題、安全運転の確保等から工事を二期に分けたのであろう。
金をつぎ込んでも、下手をすると工賃や資材価格の上昇で金額だけ膨らんで工事は未完成ということになりかねない。良い例がオリンピック施設の金額高騰である。政治が入ると安くて良いものという当たり前のことが出来なくなる。

70年代前半、TOCの開発者であるエリヤフ・M・ゴールドラット博士は「工場の生産性はボトルネック工程の能力以上は絶対に向上しない」という至極当たり前の原理を提唱した。
リニア新幹線プロジェクトがちゃんと進捗していないと政府が信じているなら、何がボトルネックになっているのかを科学的に調査して、ボトルネックを取り去ることを考えれば金を使わなくてもすむ。

政府の要人の頭の中は鉄道建設やハコモノ建設が投資の本筋だという時代遅れの古い考えが残っているようだ。最も富を生み出す現代の投資(錬金術)は、Pokemon GoやARMに見られるような少数精鋭の独創的開発者による知的財産の取得である。

(参考)
南アルプスルートの工事費
品川―名古屋 5.5兆円 79分から40分 2016年から2027年開業
品川―大阪  9.0兆円 120分から67分 2045年までに延伸(最速2037年
財政投融資リニア中央新幹線の大阪延伸前倒し(名古屋と同時開業も視野に)に約3兆円。