百人一首 濡れる袖 五首
歌92、二条院讃岐
わが袖は 潮干に見えぬ沖の石の 人こそ知らね 乾くまもなし
「沖の石」
歌90、殷富門院大輔
見せばやな 雄島の海人の袖だにも 濡れにぞ濡れし 色は変わらず
「雄島」 http://www.resort-inn.jp/kanko/kanko_ojima.html
松島の地名発祥の地「雄島」
見仏上人が12年間もの長きにわたって島から一歩も出ずに修行した偉業を讃えて、ときの後鳥羽上皇から
千本の松を贈られたことにより「千松島」と呼ばれるようになり、それが転じてこの地一帯が「松島」と
なったという地名発祥説のある島です。
歌72、祐子内親王家紀伊
音に聞く 高師の浜の あだ波は かけじや袖のぬれもこそする
「高師の浜」 堺市浜寺から高石市にかけての海岸
歌65、相模
恨みわび ほさぬ袖だにあるものを 恋にくちなむ 名こそ惜しけれ
歌42、清原元輔
契りきな かたみに袖をしぼりつつ 末の松山 浪こさじとは
沖の石から末の松山までに配置された乾くまもない袖から濡れることの無い袖。その間に上皇が賜わった雄島の松が置かれている。歌65は「名こそ惜しけれ」のグループで、これ以外の四首は「海のそばで、涙を流す」というテーマで、歌11,76,46,93の「船・船出」というテーマと対応している。
追加:http://www.ogurasansou.co.jp/site/hyakunin/047.html
八重葎(やへむぐら) しげれる宿の さびしきに
人こそ見えね 秋は来にけり
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今回は、これまでと趣を変え、秋の寂しさを語る歌をご紹介し
ます。荒涼とした風景に感じる秋。百人一首にはこんな哀感のあ
る歌も含まれています。
■□■ 現代語訳 ■□■
つる草が何重にも重なって生い茂っている荒れ寂れた家。訪れ
る人は誰もいないが、それでも秋はやってくるのだなあ。
歌14、河原左大臣(源融)が塩釜の浦の景色を模して作らせた庭園。融から約百年後の荒れた様を歌う。
陸奥の末の松山、松島、塩釜が詠まれている。上皇の思い入れのあった場所であったのであろう。