経常収支の国際不均衡を解決する

日経にしては珍しく輸出企業寄りではない、中立の意見を述べている。
対米黒字を縮小するために高価な米製武器を買うという安倍政権に読んでもらいたい。

国際不均衡を放置 G20の不作為、貿易戦争の根底に
2018/7/23 21:00日本経済新聞 電子版

 【ブエノスアイレス=河浪武史】トランプ米政権が仕掛ける貿易戦争の根底には20カ国・地域(G20)の不作為があるともいえる。米国を含む各国が最大の課題とされてきた世界の経常収支の不均衡(グローバル・インバランス)を放置し続けてきたからだ。

 2008年のリーマン・ショック直後、当時のオバマ米政権は中国など新興国との経済協調を強化するため、G20による首脳会議の枠組みづくりに動いた。金融危機の引き金を引いたのは米国の住宅バブルだが、それを支える投資マネーは過剰貯蓄だった新興国から流れ込んだ。米国の過剰消費と新興国の過剰貯蓄という不均衡が巨大なバブルを生んだとの認識から、再発防止がG20の使命となった。

 ただ、マクロ経済の調整は一朝一夕には進まず、危機が去ると不均衡を巡る議論も途絶えた。G20参加者の一人は「活発だったのは10年の韓国でのG20まで。今では議論らしい議論すらない」と明かす。ドイツや日本では経常黒字が再び拡大。中国など新興国の輸出依存も変わらなかった。

 米国の過剰消費体質も改まらず、同国のモノの貿易赤字は17年に7962億ドル(約88兆円)と08年以来の水準に拡大した。基軸通貨国のため海外からの資金で手当てできるとはいえ、マネーは大企業や富裕層に集中し、住宅や教育に投資したい中間層には行き渡らない。グローバル化の恩恵が行き届かない階層の不満が、保護主義を前面に掲げるトランプ氏を大統領にまで押し上げた。

 トランプ政権は10年で1.5兆ドルという大型減税を決めており、内需過熱で貿易赤字もさらに拡大しかねない。日本は19年にG20議長国を務めるが、財務省幹部は「国際不均衡が大きなテーマになる」と明言する。目先の貿易戦争の解決が最優先であるのは確かだが、根源にある経常収支の不均衡にまで切り込まなければ、対立の芽を断ち切ることはできない。