米国の制裁措置に対して、中国「お返しをしなければ失礼にあたる」の意味

原文は「礼記」からで“来而不往非礼也”(来タリテ往ゆカザレバ礼ニアラザルナリ)ということのようだ。

トランプ氏や安倍氏には「礼記」といってもチンプンカンプンだろうが、中国の外交の伝統が伝わってくるような話である。

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中国外交部の報道官の「お返ししなければ失礼」発言の出典は『礼記
http://id.fnshr.info/2018/03/24/lai-er-bu-wang/
礼尚往来。往而不来非礼也。来而不往亦非礼也。
(書き下し文:礼ハ往来ヲ尚たつとブ。往ゆキテ来タラザレバ礼ニアラザルナリ。来タリテ往ゆカザレバ亦また礼ニアラザルナリ。)
(訳:礼では行き来することを大切にする。行ったのに来なければ礼に合わないし、来たのに行かなければ礼に合わない。)
礼記』曲礼篇

華報道官のコメントは、表面的に見ると「米国が制裁措置をとったのだから、中国としても対抗措置をとって報いなければ、中国が非礼になる」と解釈することもできる。しかし、『礼記』での意味を踏まえると、「一般に国際貿易というものはお互いに恩恵を往来させることで利益を得るものなのに、米国が一方的にその仕組みをふみにじって恩恵を返すのをやめたということは、米国の方が非礼になる」という解釈できなくもない。これは一方の解釈だけが正しいというものでもなく、“来而不往非礼也”という言葉を引くことで、うまく玉虫色の説明になるようにしているのだろう。

なので、NHKの「お返ししなければ失礼」という訳が別に間違っているというわけではないのだが、この日本語の表現だと売られたケンカは買ってやるといった高圧的な感がぬぐえず、典故を引くことの奥深さが分からなくなってしまっている。実際には、“来而不往非礼也”という言葉の背後にのびる典故と文化的蓄積がそうした高圧的な感をうまく防いでいる面があるのだ。