4/10日経書評「日本語を作った男」山口謠司著、林望評

日本語は自然発生的に使えるようになるのではない。小学校から高校まで9年間学んだ結果やっと使えるようになった。

書評の対象となった作品は、明治維新の時代に標準語を定着させるため上田万年という言語学者が日本語の研究とその近代化に一生を捧げたようすを詳しくたどっている。言葉の改革で守旧派(文語)と改革派(口語)の対立があり、守旧派のボスが森鴎外で改革派の旗頭が夏目漱石であったことは興味深い。

思えば、5世紀ごろの漢字受容から先人は日本語を時代に相応しいものにするために大変な努力を重ねてきた。今の私たちも、今使われている日本語を当然のものと受け止めるのではなく、さらなる進歩に向け前進していかなければならない。