アベノミクスが成功しなかったので衆院解散をするのか

消費税再増税を見送るので衆院を解散する。各紙からは非難の嵐である。いわく、大義名分がない、党利党略である、と。

解散が党利党略であることは政党政治なら当然のことで殊更言い立てることではない。各紙は、消費税再増税が見送られたことに不満なのであろう。

解散という大きな手を打ったにしては、安倍政権は総選挙の論点を軽く見ているように思われる。大して負けないだろうから今やったほうが得だという見方がそのことを裏付ける。

解散を決意したが故にアベノミクスの是非が大きな論点に浮上してきた。アベノミクスの是非は、与党の守勢と野党の攻勢という構図を鮮明に見せつけ、しかもこの構図は長く続く。
安倍政権は追い込まれる前に先攻するのを得意技にしているといわれるが、今回は争点を引っ張り出して自らを受身のポジションに置いてしまった。争点を軽く見過ぎているのではないだろうか。
16年になってもアベノミクスの影の部分に手が打たれないと参院選敗北、安倍政権の瓦解が懸念される。
安倍政権は、アベノミクスの神通力に自信をもっているのだろうか。株高頼みだけとすると危ういね。

このことの良い教訓は、金融緩和の先輩であるアメリカである。アメリカでは金融緩和の帰結として富の偏在が進行して、1%対99%と言われるような社会の亀裂が進んだ。このことがダウは史上最高値を更新したのに中間選挙民主党が敗北することにつながった。いわく、大衆は株価上昇の恩恵を受けていない、と。

アベノミクスを過信して、アメリカの例を軽視すると16年の参院選では、日経平均は今世紀の高値(18,320円)を更新する(いくら強気でも史上最高値を更新するとは言えないだろう)のに自民党は惨敗ということはあり得る。偏った富をどう経済全体に回らせるか(アベノミクス・フェーズ2)が今後の課題である。これまでの減税や補助金といったばらまきから発想を切り替えなければならない。

ともあれ、総選挙の結果は来月半ばにはわかる。その結果は興味深いものである。奇妙なことに、与党が敗れても消費税再増税見送りは覆されない。消費税再増税を唱える政党はないから。この点で意味不明な総選挙と評することは出来る。

チーム安倍はどのような方向へ動くのか。
暗黙のアコードを結んでいた黒田日銀総裁は本当に国債自警団到来の悪夢に夜眠れないのだろうか。財務省と党内の増税推進派はどう巻き返すのか。消費増税応援団の日経は論説をどのように変えるのか。夫々の今後の動きは見ものである。

11/12 日経
http://www.nikkei.com/markets/company/news/news.aspx?scode=8301&type=2&g=DGXLASFL12H7M_12112014000000

日銀総裁、追加緩和「15年10月の消費税率上げが前提」
2014/11/12 15:22
衆院財務金融委で答弁する日銀の黒田総裁(12日午後)
 日銀の黒田東彦総裁は12日午後、衆院財務金融委員会に出席し、10月31日に開いた
金融政策決定会合で決めた追加緩和について「2015年10月に予定される消費税率の
10%への引き上げを前提に実施した」と述べた。そのうえで国全体として財政再建への
取り組みが大切であると指摘した。
 また量的・質的金融緩和は「2%の物価安定目標の達成が目的である」と述べた。
そのうえで国債の買い入れの結果「ハイパーインフレのような悪性インフレが生じることはない」
とした。維新の党の伊東信久議員と同党の小池政就議員への答弁。
〔日経QUICKニュース(NQN)〕