円安は行き過ぎなのか

米ドルが107円を越え、108円も視野に入ってきた。貿易収支は、8月までに26ヶ月連続の赤字である。

貿易赤字が続くので、円高が望ましそうだがそうとも言い切れない。産業界からは105円前後が妥当との声(下記記事参照)があるが、彼らは海外に生産拠点を移したので、それ以上円安になると国内へ輸入する製品の採算が取れなくなるからだ。経営判断の結果であるから、止むを得ない。

異次元金融緩和であらわになったのは、誰も思っていなかったほどに供給力の天井が低かったことである。そのことが輸出の伸び悩み、輸入の高止まりとなって現れている。
輸出に対して影響がないなら、円高に誘導して輸入の円金額を減らすという意見が出てくるだろう。それが先に引用した産業界の声である。

だが中長期的には、輸入品を割高にし国産品に代替させるには、この円安傾向を維持していくのが良さそうである。それによって国内の供給力は回復する。

産業界の声に惑わされて、円高へ回帰するのは良くない選択である。

ロイター
アングル:一段の円安警戒する日本企業、迫ってきた「損益分岐点
http://jp.reuters.com/article/jp_fed/idJPKBN0G807U20140808

[東京 8日 ロイター] - 米利上げによるドル高が視野に入りつつある中、日本の産業界から一段の円安を警戒する声が出てきている。輸入企業はもちろん、輸出企業にとってもエネルギーや素材の輸入コストが負担となる可能性が出てくるからだ。自動車部品メーカーからは105円前後が妥当との指摘も聞かれる。

<簡単に日本に戻せない生産>
102円を軸に上下1円のレンジ相場がほぼ半年続いてきたドル/円JPY=EBS。だが、この秋から動き出すとの見方が強まってきた。米国でテーパリング(量的緩和縮小)が早ければ10月にも終了する見通しで、その後の利上げが視野に入ってくる。

一方、日本では量的・質的金融緩和(QQE)が継続、もしくは追加緩和が期待されるなか、市場では、年末までに108円程度を試すとの予想も出ている。

円安は日本経済にとってプラス──。マーケットでは、そうした見方が依然多いが、産業界の現場は少し違うようだ。

http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPL3N0RC5NU20140912

[東京 12日 ロイター] - ロイターが民間調査機関の予測をまとめたところ、
8月貿易収支(原数値)の予想中央値は1兆0289億円程度の赤字(前年同月は971
4億円の赤字)となる見通し。海外経済の不振で輸出がマイナスに転じ、再び1兆円台の
大幅な赤字が見込まれている。赤字なら26カ月連続。