哲学なき法人減税論

安倍首相はどうしても法人減税をやりたいようだ。曰く、日本企業が海外へ逃げていく、海外の企業が日本に進出してくれない、と。ただ税率が高いか安いかだけで、これが安倍首相の税に対する考え方であるというものが伝わってこない。

損得論で説得するのも一つの方法かもしれないけれど、それだけではどこまで下げるのかが見えてこない。まさか、シンガポールが10%にしたら日本もそれに追随するというのかな。それでは、やはり、理念なき底辺への競争だろう。他国ばかり気にしていては、美しい国、日本はできません。

政府は、税に対する国民のコンセンサスを集約するのが税率云々の前にしなければならないのではないだろうか。徳のある君主が民に対しお手本となるような考えを示して国を指導するという徳治主義的な政治思考であるが、即効性はなくてもじっくり効いてくるだろう。株価を上げるのが政治的成功だという成功体験が、市場に気に入られることが第一とする思いになるのかな。

特に消費増税と法人減税のセットは、最悪のタイミングだ。納税者に対し、財政は言われているほど悪くないのではないか、社会保障制度は維持できるのではないか、というメッセージを送ることになるだろう。ひいては国民の政府に対する信頼感を失いかねない。

赤字法人や税を免除されている法人は税金を払わなくてよいのか、法人税はなくても良いのではないかなど考えるべきことは多い。