アベノミクスの行方:異次元緩和

異次元緩和の発表から3ヶ月がたった。アベノミクスの金融緩和は狙いを達成できるのか。日経経済教室では、7/2と7/3に「異次元緩和から3ヶ月」という特集を組んだ。


7/3は植田和男東京大学教授「市場の金利予想、不安定に」を取り上げている。
「追加策の余地に限り」「米金融政策の影響も大」
ポイント
・日銀に金利への配慮が不十分な可能性あり
・インフレ実現には中長期金利の抑制が必要
・国内資金の株式へのシフトも起きていない


大胆な金融緩和の狙いは二つあった。
1. インフレ期待に働きかけ需要を押し上げる。
2. 長期金利を低めにすることにより、ポートフォリオ・リバランス(国債の売却資金を株式や外貨証券に振り向ける)を促す。
これらの結果、2年間で2%のインフレ目標が達成される。

1については、今のところ目立った動きはない。2については、国内機関投資家は国内株式を売り越しし続けているし、外貨証券も売り越しを継続している。つまり2の効果は全くなかったということになる。これまでの株式と為替の動きは、2を期待した海外投資家の売買によると結論される。

このことは13年第1四半期GDPにも現れている。

- 名目GDP(兆) 名目成長率(%) 実質GDP (兆) 実質成長率(%)
2013年1−3月 475.7 2.2 523.2 4.1

今回の金融緩和は4月4日がスタートであるから第1四半期の結果とは無縁であるとはいえない。すでに安倍内閣発足より日銀は大幅な金融緩和に踏み切っているからだ。1も2も機能しないのにGDPが上昇したのは、大胆な金融緩和とは別の要因が働いているのである。

第2四半期に至っても機関投資家の売り越しは続いていて、2については今のところ全く機能していない。問題はGDPの数値がどうなるかである。成長率が鈍り、名目と実質の差が同じようであれば、大胆な金融緩和への懐疑が出てくるのではないだろうか。


植田教授は先の懸念として、「国債保有残高もベースマネーも2年間で2倍にするという措置の後に何が残っているのかは自明ではない」ことをあげる。
そして、「一段の大幅な資産購入といった措置が考えうるが、その有効性の有無とともに、6兆円前後しかない日銀の自己資本で支えきれるリスクテークの範囲を超える可能性が高く、政策の責任を誰が負うのかという問題も無視できなくなろう」と指摘する。


安倍内閣にとって参院選はおそらく勝利するだろうが、本当の試練はその後に迫っている。
出口論ではなく撤退論という話も出てくるかもしれない。