電力制度改革案のまやかし

日経12/26(月)「発送電一体見直し」「政府検討 電力市場の競争促す」
同じく経済面「東電支援と表裏一体」「電力制度改革 資本注入へ環境整備」

(記事要旨)
政府が年明けから本格検討に入る電力制度改革の論点整理の骨格が分かった。政府は東電への公的資金の注入、電気料金上げなどの詰めを年明けに本格化するが、いずれも反発が予想される。制度改革の具体案を示し、国民の理解を得る狙いがある。

(スケジュール)
12月27日:経産相が論点整理案を「電力改革と東京電力に関する閣僚会合」に提示
12年1月中旬:同論点整理案を資源エネルギー調査会に提示
12年1月下旬:電力システム改革専門委員会に改革の経産相私案を提示
12年中:閣僚会合や専門委員会などが制度設計を議論
13年1月:電気事業法改正案を通常国会に提出

見出しから一目で分かるのは、東電国有化という社会主義的政策と電力市場の競争促進という自由主義的経済政策が矛盾なく両立するという不思議さである。

これは矛盾でなく、記事を読むと東電を存続させるために「国民の理解を得る狙いがある」のである。だから、これから一年ほど費やして議論される「電力制度改革」はまったく期待できるものではない。

記事で紹介されている案は、世の中で無邪気に「発送電分離」を唱える人が多いので、それを逆手にとって人々を煙に巻こうとしている。だから、「機能分離」、「法的分離」、「所有分離」などの形態案を出して迷路に導こうとしているのである。

ポール・クルーグマンは「恐慌と民主主義」というコラムで、ハンガリーの政治を評して「民主主義の薄化粧をほどこした独裁的支配の再樹立」と述べている。これに倣えば、この電力改革案は「自由主義経済の薄化粧をほどこした社会主義計画経済の樹立」といえよう。