12/11日経社説「大局観がない野田税制大綱」

12/11日経社説「大局観がない野田税制大綱」

評判の悪い自動車課税について、社説は次のように述べる。


「焦点の自動車課税では、自動車重量税の軽減を打ち出した。エコカー減税は対象を絞って延長し、11年度第4次補正予算案でエコカー補助金も手当てする。欧州危機の広がりや超円高の影響を考慮すれば、景気への配慮は必要だろう」、「野田政権下で復活した民主党税制調査会が、特定業種の利益を代弁するような要求を重ねたのは気がかりだ」としているが、結局のところ大綱の方針を容認している。その次に続いて、「年内をめどにまとめる消費税増税の素案作りでは、与党の責任を果たしてほしい」と締めくくっているからである。大事の前の小事という風だ。


日経が自動車税減税の経済への影響の分析を行っていないのは驚きだ。この減税により、いくらか国内自動車販売高は上向くだろう、そして自動車会社の経営もいくらか安定するだろう。それは、円高への補助金をもらったことと同じであるから自動車会社の円高抵抗力を増し、再び輸出ドライブがかかり円高へと突き進むことになろう。そうなると、再び、為替介入の積み重ねと減税のおねだりの合唱だ。自動車会社に良いと思ってやったことが、財政だけを傷つけて何の役にも立たない賽の河原で石を積み上げているようになってしまう。

ではこの減税はやらないほうが良いのか。そうではない。本ブログで、円高への対応として二案を提案した。(1)あるがままに任せて、新しい産業の創出を待つ、(2)自動車業界を支える。そのために減税が必要だが、それだけでなく、円高を緩和するため輸入が増えるように国内構造を変える。どちらかの選択だ。

民主党は、(2)を選択している。しかし、減税だけでは先に述べたような悪いスパイラルに陥る。円高を緩和するための、輸入、特に食品の輸入を拡大することが必要だ。この効果は、(1)円高の傾向を緩和できる、無駄な介入や減税により政府債務が積み上がることが回避できる、(2)安価な食品の輸入増により、国民の購買力が増し内需拡大を後押しする、(3)輸入増はまわりまわって輸出増につながる。

野田政権の正しい税制大綱のあり方は、官邸首脳が自動車減税を求める「族議員」にそれと引き換えに食品輸入の拡大を図るよう「農林族議員」を説得させることであった。確か、民主党は「pay as you go」を財源確保のポイントにしていたはずだよね。

日経は(誰も耳を傾けない)海の遠くの欧州首脳を叱責する(同日の社説「危機克服には力不足のEU首脳合意」)のではなく、目と鼻の先の「族議員」と官邸の主に発破をかけてほしいものだ。