12/9 EUは基本的な点で、分離した

Europe's great divorce エコノミストより
Dec 9th 2011, 8:03 by Charlemagne | BRUSSELS

記者Charlemagne氏(仮名、仏語シャルルマーニュ大帝、独語カール大帝:742-814)

12/9(金)5AMに、EU本部でユーロ安定化の協議が終結した。その合意とはどのようなものであったか。

12/11(日)日経「ユーロ 遠い安定」に補足したい。「会議では英国を除く最大26ヶ国の参加による財政規律強化の新条約づくりで合意し」とあるが、明確に合意したのは23カ国であり、スゥエーデン、チェコハンガリーの3カ国はこれを持ち帰り、議会や与野党と協議するので、離脱する可能性がある。

現地のことは現地の報道に頼るのが一番である。特に英国が参加しない理由は何であったのか。表題の記事を簡単に紹介する。記事全体は、こちらへ。
http://www.economist.com/blogs/charlemagne/2011/12/britain-and-eu-summit

そのさわりの部分は次のとおりである。
WE JOURNALISTS are probably too bleary-eyed after a sleepless night to understand the full significance of what has just happened in Brussels. What is clear is that after a long, hard and rancorous negotiation, at about 5am this morning the European Union split in a fundamental way.
In an effort to stabilise the euro zone, France, Germany and 21 other countries have decided to draft their own treaty to impose more central control over national budgets. Britain and three others have decided to stay out. In the coming weeks, Britain may find itself even more isolated. Sweden, the Czech Republic and Hungary want time to consult their parliaments and political parties before deciding on whether to join the new union-within-the-union.

この記事で注目するのは、(1)英国が参加を拒否したことと、(2)サルコジ大統領にとって今回の合意は政治的勝利であったことである。

(1) 英国が参加を拒否したことについて。
キャメロン首相は、EUが金融規制の強化を図ることに反対し、今回の合意には加わらなかった。英国政府は、(仏国単一市場委員会の議長の影響力の下で)EU委員会が英国シティに対し敵対的な規制を発効していることを確信するに至った。今後も、23カ国が一致して英国に不利な規制を加えてくる可能性がある。

キャメロン氏は、合意から離脱したことにくつろいだ気持ちでいると表明した。また、ユーロに加入しなかったことをうれしく思うと語った。

記者は次のように評する。
ユーロ圏が万一、金融取引税を課税することになれば、シティに金融取引が流れ込んでくるかもしれない。それとも、ユーロ圏の国がユーロの取引をユーロ圏、すなわちパリかフランクフルトに押し止めるようなことになれば、どのようなことになるのか懸念もしている。
そして、キャメロン氏は英国の長期的利益の観点から重大な誤りを犯したのかもしれないが、少なくともこの時点では誰も彼を責めることは出来ないと結論する。

(2) サルコジ大統領にとって今回の合意は政治的勝利であったことについて。
仏国はAAAから滑り落ちそうになり独国の子分に成り下がったと辛らつだ。今回の協議について仏国にとって This is a famous political victory. と評している。
サルコジ大統領は長らく、中核ユーロ圏( core euro zone) の構想を抱いていた。それは、扱いにくい英国、北欧、東欧の諸国を除いたものだ。そして、中核ユーロ圏は、超国家的機関によるよりは政府間の交渉により運営されるべきであると考えていた。それによって、仏国特にサルコジ氏の影響力を最大限発揮させることになるからである。

サルコジ氏は今回、この2点について大きな前進を得ることが出来た。彼が朝5時に登場して、英国の反対によって27カ国全体の合意が出来なかったと発表したとき、ほくそえむ事をこらえようとしていた。日経には「笑みを浮かべた」とあるが、見た目の印象なのでどちらとはいえないだろう。


来年にはクロアチアがユーロに加入する。ギリシアの例があっても、ユーロに加入することは魅力的なようだ。一方で、英国のようにユーロには頑として加入しない国もある。それぞれの国益を考えた判断なのだろう。わが政府首脳の構想力はどういうものであろうか。