昨日(8/19/11金)の日経社説と大機小機について

共に考えさせられる内容である。

日経社説「日本の財政悪化はもはや放置できない」について。
冒頭の2行で財政の問題は書き尽くされている。すなわち、「高齢化で社会保障費がかさみ、長引くデフレで税収は伸びない」のである。対策は(言葉の上では)簡単だ。社会保障費を分相応のものに削り、デフレを阻止することである。

社説の説く対策は、「新首相は不退転の覚悟で歳出と歳入の改革を推進すべきだ」となっている。なぜか、デフレ対策が「歳入の改革」に置き換わっている。

具体的方策として、課題1、2、3が掲げられている。
課題1は、震災復興予算である。重要なポイントであるが、課題3とするのが適切であろう。後に触れる。
課題2は、社会保障と税の一体改革である。社会保障については、「年金、医療、介護の支出を効率化し」とあり、その後に「足りない財源を消費税の増税で手当てする」。
課題3は、成長戦略の促進である。ここでは、「成長力を高めて税収を増やす努力がどうしても要る」としている。

デフレ対策は、課題3の成長戦略の促進であろう。しかし、具体策が提示されていない。それとも税収を増やしたり増税することがデフレ脱却に効果があると考えているのだろうか。

「長引くデフレで税収は伸びない」のであるから、デフレを終わらせることが一番の課題でなければならない。デフレを終わらせ、名目GDPが拡大軌道に乗ってきてまず増収という果実を得る。最後に国民にお願いして増税の話が出るのが順序である。デフレを放置しておいて増税をすると、需要減少、円高、税収減、財政悪化の悪循環に陥る。

社説担当記者氏の頭にはデフレ脱却は日銀の金融緩和しかないので、アメリカのQE2が失敗したこともあり、それを言い出せないのかと思ってしまう。デフレ脱却は世間で言われるように日銀がお金をばら撒くのではなく、まっとうな経済政策で需要をつぶさないようにし、経済の成長の芽を摘み取らないようにして、経済を成長経路に乗せることである。1997年の橋本デフレの教訓を人々は忘れたのだろうか。

評価できるのは、課題1で震災復興費について述べていることである。「問題は腰だめの数字が独り歩きしている点だ。政府は当初5年間の復興費を『少なくとも10兆円程度』と見積もったが、具体的な費目を積み上げたものではない」という指摘である。増税で政府に掴み金を渡すというのはまともな政治家の考えることではない。経済政策としても誤りである。政府首脳が(増税によって財政再建の足がかりを作ったという)名を後世に残すために増税しやすい数字に膨らませたのではないことを祈る。

大機小機、夢風氏「検証なき増税論」について。
最後の、「結果、今後の日本経済を規定する重要な増税方針を決める基本部分が、検証されないまま了承されている。増税を支持するにしてもしないにしても、このような政策論議の空洞化を軌道修正することが先だ」という指摘は、重大だ。

以上