東芝の企業統治は日本企業全体のお手本である

取締役会VS社長、前社長・元社長の関与、バークレイズのCEO交代、

東芝が揺らいでいる。不正会計だけでは、会計上の数値だけで企業実態は変わらないのだが、2,000億円規模の資産売却、5,000-6,000億円の資金枠要請などが報道されると、キャッシュ・フローが急激に悪化していると思わざるを得ない。
会計上の数値だけをとっても、疑惑部門の減損処理、繰延税金資産の償却などが迫られるかもしれない。

14年12月のQ3業績では、総資産6.9兆円、株主資本1.9兆円。株主資本比率20.4%である。総資産が変わらないとして、1,000億円の損失計上は、株主資本比率を1.4%減少させる。

7/11日経によれば、体制建て直しのために取締役会の社外取締役の比率を過半にするという。だがこれでは、上辺を取り繕っただけで、抜本的にメスを入れたとはいえまい。報道される論調では、現社長の無理強いが今回の問題を引き起こしたとして、あくまで現社長の個人的資質の問題にしようとしている。だが、この問題は日本的企業統治の問題として一般化されるのではないだろうか。

東芝企業統治指針のモデルのような東芝がなぜ企業統治指針を遵守したにもかかわらずおかしくなったかを世に発信するほうがよほど世の役に立つ。

日本企業の企業統治が欧米のそれと、実体において全然異質であることは、下記に引用したバークレイズのCEO解任記事と比較すると一目瞭然である。
1. 取締役会がCEOに解任を通告した。
2. CEOを追放して、彼の影響力を残さなかった。

日本企業は社外取締役の導入を決めた時に、本当に腹の底から覚悟を決めていたのだろうか。これまでと同じように上辺だけを真似ているのではないか、と。
日本企業の特異性は次の点によく表われている。
1. 社長(時に会長)が万能で、取締役会を牛耳っている。
2. それにもかかわらず、元社長、前社長がにらみを利かせて、現社長が力を十分に発揮できていない。

一概に欧米流が良いとはいえないかもしれないが、日本式統治が行き詰まった時には、欧米流の企業統治を試みる企業が出てきても良いのではないか。それを提案するのが、物言う株主であり、スチュワード・シップであると思えるのだが。

7/8/15 BBC News
http://www.bbc.com/news/business-33438914
Antony Jenkins, the chief executive of Barclays, has been fired after falling out with the board over the bank's cost cutting and profitability.
Board members are believed to have wanted bigger cost cuts and more focus on the investment bank's performance.
Chairman John McFarlane said the bank needed to become more efficient: "What we need is profit improvement. Barclays is not efficient. We are cumbersome."
In a statement, Barclays said a "new set of skills" was required at the top.
Mr Jenkins has been Barclays' chief executive since 2012. The bank said a search for his successor was under way.
Barclays' chairman John McFarlane has been named executive chairman until a new chief executive is appointed.


バークレイズの業績はそれほど悪くはなかった。このレベルで不合格なら日本企業の殆どのCEOは解雇されるだろう。

12/31/14 12/31/13
Profit after tax (£m ) 3,798 2,945
Attributable profit (£m) 2,779 2,188
Return on average tangible shareholders equity 5.9% 4.8%