雇用の質

有効求人倍率が上昇しているのに、賃金は上がらず消費はぱっとしない。生産性の高い分野への人の移転が進まないからだ。
2/10日経夕刊「十字路」中前忠は次のような分析を示す。
リーマン・ショック前(00年から10年)と後(10年から15年)の米国を比較して、「付加価値生産額の上昇率は1.3%から1.0%とほぼ横ばいだが、雇用が−3.9%から+1.3%に大きく増えている。つまり、生産性の低い産業で生産と雇用が増えたのだ。米国は、生産性の低い製造業とサービス業の拡大に支えられた、効率の悪い経済になってしまったのである」と指摘する。そして、「製造業の強化は、米国の赤字をベースに成長してきた世界経済を大きく変えることになるであろう」と締めくくる。

日本の現状にあてはめると、「生産性の低い産業で生産と雇用が増えたのだ」。高生産性産業が衰退してか、海外に移転して、そこでの雇用が失われている。それなのに政府は低生産性の農業や観光に成長を託す。

米国の貿易収支赤字の削減のインパクトを後で気付いても遅すぎる。今から手を打つことは多くある。