パナソニック、事業部毎に資本金を測定する(1/14日経)

ROE改善のための必要なツールは事業毎にどれだけの資本が投ぜられているかを測定することである。

これまでには事業会社ではこのような手法が導入されることはあまりなかった。
日経はROEを改善せよと唱えるばかりで、具体的にどうするのと問うと、せいぜい株主配分を増やして分母のEを減らせと主張するぐらいであった。

事業毎の必要な資本金が測定されれば、どの事業の資本が有効に使われているかが一目瞭然で、「選択と集中」の良い判断材料になる。
事業部で必要とされる資本の合計が全社の資本より少なければ、余剰資本があるので取締役会は将来の投資へのプールとして留保するのか、株主に返還すべきかを考えなければならなくなる。
逆の場合は、増資をするのか非効率な事業から撤退するのかを決断しなければならない。

ROEを改善せよと念仏を唱えるのではなく、具体的な動きが出てきたことに注目したい。

パナソニック、17年3月期から新制度 事業部が自ら「増減資」
2016/1/14 2:00日経
http://www.nikkei.com/markets/company/news/news.aspx?scode=6752&ba=1&type=2&g=DGXLZO9608002013012016DTA000
パナソニックが2017年3月期から、事業部に資本効率の改善を促す独自の制度を導入する。
各事業部が一つの企業のように資本金を増減できるようにする。現場に資本コストを意識させ、
会社全体の資本効率の改善につなげる狙いだ。

 パナソニックは13年4月、事業部制を12年ぶりに復活。開発から生産、営業まで一元管理
するだけでなく、貸借対照表も事業部ごとに作り、本社から割り当てるお金も「資本金」と
「負債」を明確に区別している。

 来期導入する新制度では、パナホームを除く36事業部が本社から調達した資本金を
自らの判断で増減できるようになる。従来は本社が決めた資本金をほとんど
変更できなかった。あたかも一つの企業のように「増資」「減資」が可能になる。

 例えば資本が多すぎると判断した事業部は余剰分を本社に返還する。
逆に大型投資などに踏み切る場合は、本社から新たに資本を調達する。

 従来は余剰の資本が事業部に積み上がりやすかった。投資する際も事業部の自己資金の
範囲で実施するケースが多かった。新制度では資金を必要な部門に回しやすくなり、
グループ全体として資金を有効に使える。

 効果はそれだけではない。パナソニックは各事業部に対し資本コストを超える利益を
あげるよう求めている。資本コストとは投資家が期待する最低限のリターンで
期待収益率とも呼ぶ。従来は資本を減らせないため利益を高めるしかなかったが、
企業が自社株買いをして資本効率を高めるように、事業部は資本金を減らして資
本コストを抑制できるようになる。

 パナソニックでは為替や景気変動などを勘案して事業部ごとに資本コストを
約4〜16%に決めている。以前は全事業部が一律で8.4%だったが、16年3月期から
現在の仕組みにした。今回の新制度により、事業部が資本コストを一段と意識するように促す。

 パナソニック自己資本利益率(ROE)は15年3月期に10.6%と、
3月期決算になった1987年3月期以降で最高になった。
「今後も10%以上を維持したい」(河井英明専務)という。資本コストは全事業部の
平均で9%を目指す。

 パナソニックの創業者、松下幸之助氏は1933年に日本企業でいち早く事
業部制を導入した。中村邦夫社長時代にいったん解体されたが、
現在の津賀一宏社長になって復活した。今回の改革は幸之助氏以来の
「自主責任体制」をより強めるものといえ、事業部への権限委譲を進めつつ、
全体でも資本コストを上回る利益を継続して生み出せるようにする。