東芝半導体子会社、WDとの協議 東芝株主の損失と先行き

8月末契約締結に向けWDとKKRの連合、産業革新機構日本政策投資銀行の連合による日米連合に進みそうだ。

WDとの交渉が表面化してあっという間に話が進んでいるのは、少し前までにWDから条件提示があったのに(安値での売却になる)東芝が逡巡していたからだろう。東芝の背中を押したのは債権回収ファーストの銀行団であった。東芝はWDに金玉を握られていて、抵抗するべくもなかった。このディールでの勝者は、大勝利ではないかもしれないが、10億ドル以上安く買えるWDと債権回収に目処をつけた銀行団である。敗者は安売りした東芝の株主である。東芝の株主は立ち上がるかな。経産省産業革新機構はこの痛みを他人事のようにしか見ていない。

そもそも安値で売らざるを得なかったのは、東芝経産省に相談したからだろう。民間のことは民間で決めるという基本を貫いて欲しかった。それが出来なかったのは東芝経産省は深い関係があったからだろう。

次の展開はWDと組んだKKRがどんなExitを考えているかである。彼らは投資がどれだけ回収できるかにしか関心がない。泥臭い事業運営には興味がない。KKRによって利益を貪られ、技術や知的財産が叩き売られるのでは、この国の半導体事業の未来はない。革新機構にはそれを阻止できるようなノウハウは持っていないだろう。だいたい米の連合に革新機構が金を出すのは、アメリカ・ファーストでしかない。

8/24ロイター 東芝半導体、総額1.9兆円の買収で調整 WDは1500億円=関係筋
http://jp.reuters.com/article/toshiba-wd-kkr-idJPKCN1B40VX
[東京 24日 ロイター] - 東芝(6502.T)の半導体子会社売却で、新たに交渉先に決まった米ウエスタンデジタル(WD)(WDC.O)陣営が、買収総額として1.9兆円を計画していることが24日、明らかになった。

WDは各国の独禁法審査を回避するために転換社債1500億円の拠出にとどめ、議決権は持たない。東芝も1000億円の出資を残す方向だ。複数の関係筋が明らかにした。

WDの1500億円のほか、米系ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)(KKR.N)が3000億円、政府系の産業革新機構が3000億円、日本政策投資銀行が3000億円を出資する。東芝も1000億円の出資を残し、一定程度、経営に関与する。

そのほか日本企業が500億円の社債優先株を持つ方向で調整しており、日本勢で議決権の6割超を確保する計画とした。

出資以外に借り入れとして、主力取引行の三井住友銀行みずほ銀行、主要取引行の三菱東京UFJ銀行の3行が7000億円を融資する方向で調整している。

東芝は、産業革新機構や米系ファンドのベインキャピタルなどが組成する日米韓連合との優先交渉期限が事実上切れたと判断し、合弁先のWDとの本格協議に入っている。

WDは当初、15%の議決権の確保を求めていたが、各国の独禁法の審査を通すために放棄した。ただ、WDからの人材派遣などを含めて関与の仕方などの細部が詰め切れておらず、最終的に合意に至るかどうかは流動的だという。

WDは他社への半導体子会社売却に反対の差し止め請求を起こしており、東芝は訴訟リスクを回避するためにWDとの交渉を優先させる方針に転じた。WDは資金拠出が認められれば訴えを取り下げる方向で、今後、両社で条件を詰めたうえで8月末までの合意を目標に協議する。