Mr. President, you're fired.
トランプ氏らしく粘っている。これは、何度も倒産から這い上がってきた男の鍛えられた強さなのだろうか。
票数で見れば、74百万票VS 71百万票の差である。建前と本音の対決だった。もしトランプ陣営にスティーブン・バノンのような策士がいれば、ひっくり返っていたかもしれない票差である。
ことの是非は別として、バイデン氏にとって国民をまとめ上げるのは容易ではなさそうに見える。
11/12大機小機「米国の選択、世界経済に光」一直
問題は7,100万人を超える人々がトランプ氏を支持したことだ。不満のはけ口を見出せなかった人々のマグマが噴出しているように見える。製造業が支えてきた中間層崩壊の表れではないか。解決策は何か。我々はまことに重い課題を突き付けられているのである。
大手テック企業への規制は妥当なのか
日本の規制当局は、テック企業への規制に前のめりに見える。それは、政策として正しい順序なのか。
11/6日経Opinion「米IT激化する本丸攻め」「アップル検索進出の意味」リチャード・ウォーターズ Financial Times ウエストコースト・エディター
論者は、アップルがネット検索の開発強化に乗り出したことを取り上げることにより、表題の本丸攻めを展開する。
ここで面白いのは、米規制当局の姿勢だ。
規制当局は、アップルにグーグルの検索エンジンを搭載させるように、グーグルがアップルに多額の報酬を支払っていたことを問題とした。
アップルがグーグルとの取り決めを失うことに備えて自社で検索強化に乗り出したのは当然であるとする。
規制当局がこの段階で反トラスト法違反の疑いでグーグルを提訴したのかである。
検索サービスを巡る戦いが始まりそうな状況は、2つの疑問を浮上させる。
- なぜ巨大テック各社は、それぞれが成功を収めた中核事業の分野でお互いにもっと競争してこなかったのか。
- 規制当局はこれらテック各社が互いにもっと開かれた競争をする方向に追い込めるか。
1の答えの一つは、大手テック各社は、これまで互いの縄張りをさほど侵さなくても世界屈指の時価総額を誇る大企業に成長した。
もう一つは、ライバルに真っ向から戦いを挑むのは、おうおうにして失敗に終わる。テック各社は、互いに競争する代わりにビジネス上のパートナーとして、あるいは顧客として支え合うことで繁栄を謳歌してきた。
アップルによるネット検索の開発強化は、テック各社が互いの中核事業にこれまで以上に深く攻め込もうとしていることを物語る。
各社の企業規模と野心が拡大し、互いに衝突を回避できない段階に到達してしまったということだ。
次世代のプラットフォームの支配権を握りたいという共通した動機に突き動かされている。
以下は、評者のコメント。
規制当局が動き出したのは、テック各社が十分に大きくなり、同時に互いの協調より競争に流れが傾いている機会をとらえた。
わが国の動きを見ると、テック一流国並みにテック会社の膨張を警戒しているようだが、政策発動の順序を誤っていると言わざるを得ない。
今は、国内テック会社を育成する段階で、米で見られるような弊害はあらわになっていない。出品者などに配慮する姿勢がみえるが、消費者には収穫逓増の恩恵が行きわたるようにするのが今の課題である。
米大統領選、頼りにならない世論調査
米大統領選はまれにみる接戦で、競馬でいうと写真判定で鼻差という状態。
戦前には、米リアル・クリア・ポリティクス(RCP)の発表は、3日現在でバイデン51.2%でトランプを7.2%引き離していた。バイデン苦戦の主因となったフロリダでは、0.9%上回っていた(11/5日経)。
前回も、クリントンがトランプを圧倒していたが、実際にはトランプが勝利した。
その原因は、隠れトランプ支持者とか大卒有権者にサンプルが偏りすぎていたとか言われているが、その教訓が今回の選挙では生かされていなかった。
11/5NYT
The Polls Underestimated Trump Again. Nobody Agrees on Why.
No matter who wins, the industry failed to fully account for the missteps that led it to miscalculate Donald Trump’s support four years ago.
収穫逓増モデルで経済を読み解く
現実の経済は、収穫逓増があるから成長がある。収穫逓減の経済では、早晩限界に突き当たり、成長は望めない。
10/28日経経済教室「市場像の再構築 上、収穫逓増モデルへ対応急げ」グレン・ワイルMS主席研究員は、この問いに答える。
民主国家も資本主義経済も危機のなかでうまく機能しないことがはっきりした、と問題提起する。
19世紀後半の「限界革命」以来、資本主義の経済運営は規模に対する「収穫逓減」の法則が当てはまる世界を想定してきた。
だが実際にはほとんどの経済成長は収穫逓増プロセスから生まれる。
収穫逓減は資本主義イデオロギーの要石なのだ。
利益追求動機と効率性は両立しない。
電気、下水道、鉄道網、高速道路など、資本主義の発展を支えてきたインフラはすべて収穫逓増の原理に基づいている。
世界最大級のテクノロジー企業は巨大な収穫逓増プロセスの所有者だ。
資本主義のインセンティブと繁栄の真の源泉のずれを考えると、現実の制度が最重要の問題の解決失敗してきたのは当然だ。
筆者は、収穫逓増のプロセスをうまく運用できるのは資本主義ではなく民主主義であると指摘する。成功例としてエストニアや台湾を掲げる。
この部分は、やや楽観的かと思われる。
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次回は10/31を予定します。